あま鉄は「天空号」と「雲海号」の2両編成
軽トラックを改造した2両編成の“車両”は、高千穂駅を出発し、2つのトンネルと4つの小さな橋を越えて無人駅の天岩戸駅を通過すると、全長352mの鉄橋に突き進んでいく。105m下に流れる岩戸川を覗き込めばその高さに震えるが、広がる絶景と吹き抜ける秋風はたまらなく爽快だ。
この夏、“高千穂あまてらす鉄道”の車両がお客さんを乗せて鉄橋を越えたのは、8年ぶりのこと。2005年の台風での被災を乗り越えて運転再開にこぎつけた様は、北三陸鉄道が震災から復興を遂げる『あまちゃん』にちなんで「あま鉄」と呼ばれる。JR九州の「ななつ星」が運賃56万円の豪華列車なら、こちらは1300円の高架列車である。
高千穂町出身で「あま鉄」の社長を務める作家の高山文彦氏はいう。
「夏休みの運行で4366人の来場者が集まりました。往復5.1kmの本物の線路の上を、小さな旅をして帰ってくるお客さんの顔を見るのがとてもうれしかった」
当初は夏休みだけの予定だったが、ファンの強い要望に後押しされて運行は継続。紅葉シーズンの10月26日から11月17日までは水・木を除いて連日の運行となる。料金は、車両維持費として高校生以上1200円、小・中学生700円、未就学児300円のほか、環境整備費として100円。
「私たちの望みは鉄橋越えで終わりではありません。来年の春には、鉄橋の向こうにある3kmのトンネルを越えて、桜の名所である隣町の深角駅までの運行を実現したい」(高山氏)
トンネルの先の光は、そう遠くないはずだ。
撮影■工藤博康
※週刊ポスト2013年11月1日号