千葉県船橋市の「非公認キャラ」の「ふなっしー」が、同市から感謝状を受け取った。喜びのジャンプを決めるふなっしーからは、大人力の神髄が学べる。大人力コラムニスト・石原壮一郎氏が指摘する。
* * *
あの「ふなっしー」が並外れているのは、ジャンプ力だけではありませんでした。あの黄色い体の中には、並外れた大人力も詰まっているようです。
今や押しも押されもせぬ大スターとなった「梨の妖精」の「ふなっしー」ですが、ここまでの道のりはけっして平坦ではありませんでした。誕生したのは去年の4月。しばらくのあいだは、いろんなイベントに勝手に押しかけては冷たくあしらわれたり、船橋市に直訴しに行って公認を断わられたりといった辛い時期を過ごします。
ちなみに船橋市は、「ふなっしー」が注目され始めた今年の春に、けっしてつぶしにかかったわけでもあてつけでもないでしょうが、地元産品をPRする公式キャラとして「目利き番頭 船えもん」を擁立しています。
そんな複雑な関係にあった「ふなっしー」と船橋市ですが、10月30日に歴史的な和解が実現しました。千葉県船橋市の名を全国に広めたとして、松戸徹市長が直々に感謝状を贈呈したのです。ライバル(?)である「船えもん」も、副賞を手渡して祝福しました。
このときの「ふなっしー」のコメントが、あまりに大人力にあふれていて、心中を勝手に察すると涙を禁じ得ません。彼はいつものように明るく甲高い声で、こう言っています。
「ふなっしーが勝手に始めたことなのに、懐の深い船橋市民、市長、市役所の方が認めてくれ、感謝状までもらい、本当に感謝感激なっしー」
「船えもんは、船橋をいっしょに盛り上げる仲間なっしー」
そして、船橋市の松戸市長(ややこしいですね)や「船えもん」と並んで和解の大ジャンプ。いきさつから言えば「お前ら今さらなんだよ。あれだけ冷たく扱っておいて、ちょっと人気が出た途端にこれかよ」「船えもん? 公式キャラでございとおっしゃっているわりには、ずいぶん無名でございますこと」と思ったとしても無理もない状況です。
しかし「ふなっしー」は、いきなり揉み手で感謝状を贈りに来た船橋市の提案を受け入れて、市や市長の顔を立てつつ、いっしょにニュースで大きく取り上げられることで「船えもん」も一気に有名にしてあげました。結果的に自身のイメージアップにもつながっているとはいえ、懐が深いのは間違いなく「ふなっしー」のほうです。