尖閣諸島や歴史認識をめぐる問題で冷え込んだままの日本と中国の関係だが、その水面下で関係修復に向けた動きが始まっているという。中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏が解説する。
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日中両国が関係修復に向けて動き始めている。中国の大手企業10社の首脳が9月24日から5日間、東京を訪問し、日本の政府高官や企業首脳らと会談した。また、北京市政府は大気汚染を改善させた東京都の経験に学ぶために10月下旬から今月初旬にかけて代表団を東京に派遣。さらに、日中平和友好条約35周年の記念行事も10月下旬、北京で行なわれた。
いずれも沖縄県の尖閣諸島問題をめぐって両国政府は鋭く対立しているなかでは異例の措置だ。
中国では12日に中国共産党の第18期中央委員会第3回総会(3中総会)が終わり、習近平指導部は経済改革の進展を進める「深化発展改革指導小組(グループ)」や中国版国家安全保障会議(NSC)ともいえる「国家安全委員会」の創設などを決めた。中国は今後、外交に力を注ぐ余力ができたことになり、経済を中心とした関係改善に乗り出すかどうか、注目が集まっている。
このようななか、11月18日から日中経済協会(会長・張富士夫トヨタ自動車名誉会長)訪中団が北京市や地方都市を訪問する予定だ。日中経協側は習近平・国家主席ら最高指導部との会談を希望している。習氏や李克強首相らとの会談が実現すれば、事態は大きく動きだすことになろう。
政治が動かないなか、中国進出の日系企業の対応も分かれている。日中経済に詳しい日中外交筋は「いま中国市場をめぐって、企業間でも撤退か。それとも再び攻勢をかけるか。あるいは、両にらみでしばし静観するという3つのグループに分かれている」と明かす。
撤退グループは製造業関連の中小企業が多い。中国では労働者の賃金も上がって生産コストが高くなっており、採算が合わないからだ。特に、中国企業への委託加工の場合はなおさらだ。一方、攻勢組は中国でも成長産業である自動車、医療のほか、コンビニ、デパートなどの流通・サービス業が主だ。