コートにマフラー、マスク姿の人が増えてきたが、そのうちの何割かは「だてマスク」だ。風邪とも花粉症とも関わりなく普段からマスクをつけるこの習慣は、若者や女性を中心に広がった。2011年に雑誌「女性セブン」が渋谷で調査したところ10代~30代のマスク姿男女のうち、だてマスクは3割にも。身近な場所を思い起こせば、季節を問わずマスク姿の人が増え、自宅で就寝時に着用するという人も少なくない。
仕事中も寝るときも着用するようになって3年くらい経つという30代の会社員女性は「マスクをしているのが普通。していない方が落ち着かないし、外へ出られない。手放せないですね」と頼り切りだ。
「2009年4月から流行した新型インフルエンザをきっかけに、風邪や花粉の季節を過ぎてもマスクが売れるようになりました」
一年を通してマスクをする人が増えたのは、パンデミックとも呼ばれた新型インフルエンザがきっかけだったと振り返るのは、マスクなど衛生用品会社が加盟する日本衛生材料工業連合会専務理事の藤田直哉さんだ。
「マスクといえば風邪やインフルエンザ対策の11月から2月くらいまでと、1月後半から4月までの花粉症対策の時期だけの商品でした。ところが2009年はシーズンが終わるはずの4月に新型インフルエンザがやってきた。それ以降、マスクは季節を問わないものになりつつあります。最近は大陸からPM2.5が飛んでくるなど、夏でも有害物質を防ぎたい気持ちからマスクを手にする方が多いようです」
日本衛生材料工業連合会の調査に寄れば2008年度までマスクは年間20億枚程度の生産だったが、新型インフルエンザ流行による需要に対応しようと2009年度は44億5900万枚に増産。ところが大量の在庫を抱えてしまい、あまらせたぶんを2010年度、2011年度と減産して消化した。2012年度は28億7300枚へと回復しており、2013年度も28億枚を超える程度になる見込みだ。しばらくこの生産数量が続くだろうとみられている。
「生産量の95%を占める不織布マスクは立体やプリーツなどの加工がしやすく、固さも調整しやすい。おかげでサイズ対応が細やかになっただけでなく、装着時の不快感や化粧崩れの心配がなくなり、保湿効果など機能も多様化しました。使用目的も様々で、健康や衛生のためだけでなく防寒、保湿や美容など様々な理由で季節を問わず利用する人が増えていますね」(前出・藤田さん)