冬の安全ドライブを支えるスタッドレスタイヤ。その装着率は、ほぼ100%の北海道を筆頭に、近年では東海地方などでも徐々に上がってきているという。このスタッドレス市場で圧倒的なシェアを誇るブリヂストンがこの冬、“史上最高性能”を謳った新商品を投入した。
今年7月中旬。うだるような酷暑の中、千葉県浦安市の大型特設テント内には、季節外れの雪が敷き詰められていた。記者たちが見守る中、その雪の上をスタッドレスタイヤを履いたクルマが安定した走りで通り抜けていく。ブリヂストンの最新スタッドレスタイヤ『ブリザック VRX』の発表会が開かれていたのだ。
「『VRX』とは“頂点”を意味する“VERTEX”に由来します。初代『ブリザック』の発売から今年で25年。当社スタッドレスタイヤの最高傑作だと自負しています」
そう自信をのぞかせるのは、『ブリザック VRX』の開発で中心的な役割を担ったウィンタータイヤ開発部の林徹だ。
『ブリザック』シリーズは1988年に登場。以来、世界中で2億本を売り上げてきたスタッドレスタイヤの看板商品である。
「『ブリザック』シリーズは、ゴムの中に氷上の水膜を除去するための気泡を入れた『発泡ゴム』を採用することでグリップ力を得ています。『ブリザック REVO GZ』では、この発泡ゴムの性能を上げたほか、左右非対称のトレッドパタン(路面と接する面のブロック状の溝)を採用して、氷上から雪上、乾燥路、ウェット路面など様々な冬道での効きを実現しました」
2009年に発売された『ブリザック REVO GZ』は、スタッドレスタイヤのシェアトップを独走する人気商品となった。
そんな林に、『ブリザック』シリーズ最新モデル開発の指令が下った。無論、前モデル『ブリザック REVO GZ』を超える高性能を実現することが至上命令である。前モデルの開発に携わった林には、そのハードルがどれほど高いものか、痛いほどわかっていた。
掲げた目標値は氷上でのブレーキ性能を、前モデルから約10%向上させるというものだ。簡単ではない。