防衛D:そういわれれば思い当たるフシがあります。指定文書を持ち出すのは管理者立ち会いで保管庫の鍵を開けてもらわなければならないなど、手続きが非常に煩わしいのに、主計局から「資料を出せ」といわれて持って行っても担当者はろくに見ない。裏にそんな抜け穴があるとは全く知らなかった。
経産B:財務官僚は情報操作が生業で、税制改正などでは都合の良い情報だけをメディアにリークし、他省の秘密を集めるのにも熱心だが、防衛秘密保持では自分たちだけ安全圏に身を置いている。
外務C:いくらなんでも、それは不公平すぎる。
財務A:いや、今回の特定秘密保護法案では、わが省も漏洩すれば懲役10年の特定秘密の業務取扱者になる。
──特権剥奪は当然でしょう。
経産B:そうかな。現在の「特定管理秘密」の業務取扱者の人数(昨年末時点)を見ると、わが省が89人なのに対して、財務省は35人しかいない。外務省の2000人や警察庁の500人と比較するつもりはないが、財務省の場合は、人数からみて次官や官房長、局次長くらいまででしょう。
主計局の防衛担当職員でも、特定秘密は取り扱っていないという建前にすれば「業務外知得者」となり、漏洩しても処罰されない。「省の中の省」を自任し、予算編成権で全省庁の特定秘密を知りうる立場の財務省にしては腰が引けている。
財務A:わが省だけが処罰を免れてきたかのようにいわれるのは心外だ。国家公務員法の守秘義務はあるし、第一、漏洩事件など起こしていない。「特別管理秘密」も経産省は12項目あるが、うちはゼロ。人数が少ないのは当然だ。
あえていえば、この法案が施行されたとして、実際に漏洩事件が起きても起訴は難しいという点は他省庁も同じではないか。機密漏洩事件で裁判になれば、公判で外部に流出した以上の内容や、役所の漏洩防止策などまで明らかにしなければならない恐れがあるから、国益上、国は裁判を避けるために漏洩者を不起訴や起訴猶予にするケースが多くなる。これまでの防衛省の機密漏洩事件もそうだった。つまりは懲役10年への罰則強化といっても、戒めの意味が強い。
経産B:開き直ったな(苦笑)。
※週刊ポスト2013年12月6日号