スポーツ

田原成貴 1993年有馬記念のお立ち台でウソ泣きしたとの説も

 逆転、挫折、復活……レースに凝縮される悲喜こもごものドラマは、人の一生にも例えられる。だから人は馬に熱狂する。競馬界に語り継がれる「至高の名勝負」から、1993年の有馬記念について、亀和田武氏(コラムニスト)が綴る。

 * * *
 競馬の世界から、いまは追放された騎手のことを記したい。田原成貴。昭和53年(1978年)の騎手デビューを、あっさり初騎乗、初勝利で飾る。新人ながら一気に関西のトップジョッキーに昇りつめ、多くのG1レースも制した。関東も含めて全国リーディングの首位にも輝いた。
 
 身長1メートル69。その端正な容貌から、武豊ブームが起きるまでは“関西の玉三郎”と呼ばれるほどの人気だった。
 
 空前の競馬ブームが到来しようとしていた。昭和63年に地方の笠松競馬から移籍した“芦毛の怪物”オグリキャップがブームの立役者だった。天才騎手、武豊の活躍もブームを加速させた。
 
 平成の初期におきた一大競馬ブームは、オグリキャップと武豊によって作られた。田原成貴の居場所はなかった。二度の落馬負傷で、左の腎臓を摘出して田原の騎乗数が減ったのと、武豊の華々しいデビューが、ほぼ同時だった。
 
 スポットを浴びる機会のなくなった田原にワンチャンスが巡ってきた。平成5年の有馬記念。騎乗馬はトウカイテイオーだった。3歳時は皐月賞、日本ダービーを制し、4歳ではジャパンカップも勝った。しかしジャパンCをはさんだ秋の天皇賞は7着、有馬記念は田原が騎乗したものの11着と惨敗している。たび重なる故障で、有馬はぶっつけ本番となった。
 
 テイオーにとっては364日ぶりのレースだ。順調でありさえすれば、テイオーが現役最強馬であることは、誰もが認めていた。おまけに聡明そうな目と額の美しい流星は、多くの競馬ファンの心をつかんだ。競馬史に残るグッドルッキングホースのNo.1だ。
 
 強さと美しさをあわせ持つテイオーにグランプリ有馬記念を勝たせたい。競馬ファンみんなが、それを望んでいた。なのに「だけど1年ぶりだからなあ……」の呟きがファンの口からは洩れる。1年間の空白を克服して、G1を制した馬はいなかった。
 
 強豪馬も揃っていた。出走14頭中、8頭がG1馬だ。ファン投票首位の菊花賞馬、芦毛のビワハヤヒデが一番人気だ。
 
 スタートが切られた。先頭に立ったのはメジロパーマーだ。好位にレガシーワールド、ホワイトストーン、ビワハヤヒデ、ウイニングチケットなど人気馬が付ける。スタートのよかったテイオーは中団まで下げた。
 
 3コーナーでビワハヤヒデが加速し、直線入り口でメジロパーマーをかわした。鞍上は岡部幸雄。自信と勢いに満ちた騎乗だ。ウイニングチケットもレガシーワールドも脚色が一気に鈍る。愛嬌のある大きな頭をした芦毛馬の勝利は動かないと誰もが思った。
 
 そのとき、外から1頭の馬が凄い脚色でビワハヤヒデに並びかけてきた。トウカイテイオーだ。他の馬はいない。二頭だけ。マッチレースとなったが、直線坂上でビワハヤヒデを抜くと、残り100メートルをゴール前まで走りきった。着差は1/2馬身。しかし着差以上の圧倒的な勝利だった。

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン