ところが、昨年来、中国側は尖閣諸島を「自国領」と強烈に主張したこともあって、空軍機を頻繁に尖閣諸島周辺に飛来させた。それによって、日本の空軍自衛隊が頻繁にスクランブルをかけたことで、中国の国民にもADIZの存在が広く知られることになり、中国軍も日本への対抗上、ADIZを設定せざるを得なくなったのだ。
とはいえ、11月中旬まで中国共産党の重要な会議である3中総会が開催されていたため、軍トップの習近平主席ら最高指導部が忙しく、設置発表のタイミングが3中総会終了、1週間後の11月22日の夜になったというわけだ。
しかも、設定した2時間後の23日午後には米軍機がADIZを悠々と飛行したにもかかわらず、中国側はスクランブルをかけられなかった。「中国軍は張り子の虎か」と中国の国防省の記者会見で、外人記者が揶揄しても、中国側は反論すらできなかったことから考えると、尖閣問題で、これだけ米軍が前面に出てくることを予想できなかったと言わざるを得ない。
ただ、今後も同じようにスクランブルをかけられない状況を繰り返せば、中国側のメンツ丸つぶれになるため、危険を承知でスクランブルをかけることも考えられる。その際、飛行技量で劣る中国側が偶発的に戦闘状態を引き起こし、どちらかが撃墜されるとの不測の事態は警戒しなければならないだろう。