NPO法人「日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)」の代表もつとめる諏訪中央病院名誉院長でベストセラー『がんばらない』ほか著書を多数持つ鎌田實氏は、イラクだけでなくシリア、東日本大震災の被災地への救援活動も続けている。シリアと東北、遠く離れた二つの土地が未使用の支援物資を贈る『絆ぐるぐるプロジェクト』でつながった経緯を鎌田氏が報告する。
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シリアの内紛は思っていた以上に泥沼化し、ますます混迷の度合いを深めている。出口がまったく見えない。とりあえず、サリンなどの化学兵器に関して、シリア政府は化学兵器禁止条約に加盟し、約1290トンの兵器を来年3月までに廃棄すると決めた。
その後、生産設備を破壊したと発表したが、本当かどうかは分からない。というのもシリア内は治安が悪く、外国人が入って本当に廃棄されたかどうかを確認することができないからだ。
そこで出た案が廃棄の優先度の高い兵器からシリア国外に持ち出して処理するということ。しかし処理場所と目されていたアルバニアは受け入れを拒否。いまもって受け入れ先は決まっておらず、明るい展望がなかなか見えてこない。
今年10月段階で、すでにシリア国内では、約12万人の死者が出ている。そして2100万人の国民のうち、1割の210万人が難民となって国外に脱し、いまも毎日数千人単位で難民となっている。当初はヨルダンに難民が流れ、そこでは今も50万人以上もの人々がキャンプ生活を送っている。
僕が代表を務めるNPO法人「日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)」のメンバーは、昨夏から数回、ヨルダンやイラクの難民キャンプを訪れ、子どもたちや妊婦さんを支援してきた。
JIM-NETは、東日本大震災が起きた直後から東北の支援も行なっている。今年2月、石巻の漁師の木村さんから「全国から送られてきた衣類が手つかずで残っている。これをシリアの難民に届けてはどうか」との提案があった。そこで早速、『絆ぐるぐるプロジェクト』を開始した。