2000年以降、度重なる値下げ合戦で顧客を囲い込んできた牛丼チェーン。現在、「吉野家」と「松屋」の280円(並盛り)が標準価格になっているが、「すき家」が12月20日から期間限定で240円に値下げすると発表したことで、業界内に激震が走っている。
「240円という最安値は、もはや他社が追随できないギリギリの価格。牛丼単品の儲けは出なくてもいいという捨て身の作戦を取ったのだろうが、逆に牛丼1杯の値段はその程度のレベルだと売る側が認めてしまったようなもの」
こう話すのは、ファストフード業界のコンサルタント。確かに、すき家を展開するゼンショーホールディングスの台所事情をみると、「なか卯」を含めた牛丼店の客数減に歯止めがかからず、2014年3月期には「はま寿司」など寿司部門の営業利益が牛丼部門を追い抜く見込みだという。
最大手のすき家をもってしても、外食の主役は牛丼ではなくなっているのだ。さらに、「これまでの“牛肉信仰”が崩れ去っている」と指摘するのは、外食ジャーナリストの中村芳平氏である。
「TPP(環太平洋経済連携協定)を先取りする形で、米国産や豪州産牛肉の輸入が拡大し、食品スーパーに行けば大型のステーキ肉が安く買えるようになりました。国産牛でも300g~500gクラスが閉店間際に行けば500円以内で投げ売りされている。
これだけ家庭でも良質な牛肉を食べる習慣が普通になってきたため、牛丼やハンバーガーのブランド価値が大きく毀損されてしまったのです」(中村氏)
牛肉をめぐる外食業界の戦いは、牛丼に使われる細切れの部位から、塊肉そのものに移っている。それは、ロイヤルホストのステーキが売れたり、ペッパーランチが銀座に立ち食いのステーキ店をオープンさせて話題を呼んだりしているのを見ても分かる。
では、牛丼チェーンはいかにして生き残っていくのか。