厚生労働省は1日に野菜を350グラム以上摂るように推奨しているが、大半の日本人がその目標値を知らず、達成できてもいないという。中でも20~40代男性の野菜不足が深刻と言われるなか、日本の食品・飲料メーカーはどんな提案をしてきたのかについて作家の山下柚実氏が迫った。
* * *
振り返れば1990年代、「充実野菜」「野菜生活100」といった「野菜を飲む」新しいスタイルが提案され、急速に浸透していった。メーカーも続々と参入し、野菜ジュース市場は1700億円規模にまで成長している。
スーパーの店頭には、緑の野菜がパッケージに配された各社の野菜ジュースがひしめきあう。違いはなかなかわかりにくい。似たような商品が並ぶと当然、価格競争が熾烈になる。競争から脱するために、メーカーは次のカードを切る……。
そんな中、日経流通新聞の商品ヒットチャート上位を眺めると、カゴメ『野菜生活100 季節限定シリーズ』が絶好調だ。いったいどんな商品なのだろう?
「野菜ジュースはおいしくない──そんな先入観を持っている消費者の方々がまだまだ多いのです」と同社コンシューマー事業本部の林浩太氏(33)は率直に切り出した。
「おそらく、野菜特有の青臭さとか苦いイメージが定着しているのだと思います」
実際に飲んでみれば、こんなに飲みやすくなったのか、という感想も多い。しかし最初の一口を飲んでもらうまでが難しいという。では、「野菜ジュースはまずい」と思いこんでいる人に、いかにアプローチすればいいのか。
「可能な限り野菜感を減らし、フルーツジュースのおいしさを目指しました。飲みやすさから入ってもらって、だんだん野菜ジュースの愛飲者になっていただきたいと考えたのです」
『野菜生活100 季節限定シリーズ』の秋バージョン、『ナイアガラミックス』を一口飲んでみると……ブドウの爽やかな甘みが口の中に広がる。これって本当に野菜ジュース? 成分表示を見ると「野菜汁50%+果汁50%」「砂糖・食塩無添加」とある。「旬のフルーツジュースの味がする野菜ジュース」とは、なるほど発想の転換だ。