『中国人の取扱説明書』(日本文芸社刊)の著者でジャーナリストの中田秀太郎氏はこう分析する。
「中国の映画館は騒々しく、上映中に掛かってきた電話に出る人も珍しくありません。しかし彼らは娯楽に飢えていて、恐怖のシーンになれば一斉に叫び、ちょっとしたギャグでも大笑いする。作り手からすれば、素直な相手だと思います」
日本人には物足りないストーリー展開はどうか。中田氏が続ける。
「中国人は伏線を楽しむというより、ストレートな話が好き。そういう意味でも、この映画は中国でヒットする定石を踏んでいますね」
ヒットの要因はそれだけではなく、政治までもが関係しているという。
「米国文化の浸食を嫌ってか、2010年に中国でも大ヒットしていた映画『アバター』の上映を政府が打ち切らせる事件がありました。代わりに上映されたのは国策映画『孔子』。今回の『地心引力』は国威発揚にもなり、政府も推奨しているのでしょう」(中田氏)
興行収入が大切なのはわかる。だが、ハリウッド映画が中国に擦り寄った作品ばかり量産するようになっては、その価値すら危ぶまれることになる。