いかに番組を宣伝するか、はテレビに携わる人にとって重要なテーマだ。しかし、視聴者の側からするとそれが逆の効果として映ることもある。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。
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NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」もスタートから早3か月、折り返し地点へ。前半の期間平均視聴率(全話平均)が22.2%を記録し、なんと過去10年間の朝ドラで暫定1位と絶好調。
それはそうでしょう。キムラ緑子、近藤正臣、高畑充希、宮崎美子……味わいのある役者陣。ストーリーもさることながら、随所に際立つ日本的季節感と生活感がいい。
冬至の頃には、カボチャの煮物。おせち料理には、黒豆、叩きごぼうにきんとん。季節感や年中行事をリスペクトした料理が高い評価を得ています。
それだけじゃなく、生活まわりの小道具もリアル。目がいき届いている。手作りのハタキ、アロエの鉢植、鉄瓶、油紙の包みにかけられた麻糸。当時の生活をいきいきと再現するために、障子からこぼれる光の筋ひとつ、手を抜かない演出がすばらしい。
紬に小紋、銘仙、友禅、博多織。着物のバリエーションも、目を惹きます。「和服に憧れて着てみたくなる」「毎朝、今日はどんな着物が見られるか楽しみ」という声を耳にします。
ひとつの食べ物の中に、「栄養」という機能だけでなく、季節の表情や、人が幸せに生きていく祈りまでが込められている日本の生活文化。現代人が知らなかったさまざまな魅力を上手に際立たせて、見せくれる演出が、多くの人を惹きつけているのでしょう。
それだけに……残念。3つの「行き過ぎ」が気になるのです。
まず、め以子役・杏の表情の「行き過ぎ」。いつもいつも口びるを尖らせている。「口先」だけでセリフを言うので、感情が伝わってこないし、表情も不足がち。来年はそのあたり、なんとかならないでしょうか。
2つ目に、「いけず」を描くシーンの「行き過ぎ」。生まれてくる赤ん坊に産着とおむつを送った小姑・和枝。ところが、中を広げてみると糸の端が留めていない…。この縫い方はまさしく死装束の経帷子(きょうかたびら)と同じ。
「オネエちゃんの呪いだ!」
経帷子は「この世に留まることが無いように」「迷って帰って来ないように」という意味を込めて、帰し針をせず、糸の端を結ばない。そんな日本の慣習を使って、出産間近の義理の妹に意地悪をするシーン。これには非難の声がネット上にも溢れていました。
今回だけでなく、和枝のいけずシーンには時々、「いけず」を通り越した「行き過ぎ」が。
「いけず」とは、一般的に関西地域で「意地悪」の意味で使われていますが、「周到に計算された底意地の悪さ」「人を陥れる残酷さ」というほど強烈な意味の言葉ではないはず。いくらドラマとはいえ、赤ん坊に死装束という行き過ぎた「いけず」シーンはいただけません。