「大学案内」は学校のプロフィールを受験生に知ってもらう大事な資料。しかし東洋大学は2014年度入試から、紙の大学案内を廃止した。その意図はなにか。コラムニストのオバタカズユキ氏が解説する。
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いよいよ年始年末だ。この期間は誰もがなにかとバタついているが、大学受験生はけっこう大変なはずだ。サボっていた暗記科目の集中克服など、勉強の追い込み面でもそうだし、大学や学部・学科選びについて最終的な結論を出しておきたい時期でもある。取り寄せた何冊もの「大学案内」を読みこみ、比較検討している最中の受験生も多いと思う。
ところが、だ。その受験生で東洋大学を受けようという場合、もはや「大学案内」を読んではいない。なぜって、2014年度入試より、東洋大学はひとつの決断を行動に移したからである。大学公式HP入試情報サイトのトップ画面を開けると、以下のような文言が華麗に流れる。
<東洋大学は「大学案内」をつくりません。紙の「願書」もありません。大切なものはすべて、Webに集めました。PCからタブレット端末、スマートフォンなどのあらゆるデバイスに対応。好きなときに、あらゆる場所、あらゆる端末で学びの最新情報や入試情報、出願から入学手続まですべてがそろうWebサイトです。Webに広がる「学びの世界」をぜひ体験してください>
東洋大学は、1997年におそらく日本ではじめて有名キャラクターを起用した大学でもある。そう、毎年、あの大学の「大学案内」の表紙には、でっかくムーミン(プラス、たまにミーやスナフキン)が描かれていた。それゆえ他校生から「ムーミン大学」と揶揄されることもあった。
そのムーミンと縁を切ったのが2013年度入試から。で、翌年には紙の「大学案内」にも別れを告げた。理由は、私立大学情報教育協会の機関紙『大学教育と情報2012年度No.2』によると、要するにコストカット。「膨大な時間とコストをかけて制作したガイドブックが本当のところどれだけ読まれているのか、大学選択にどれくらい機能しているのか、未だに正確に掴むことができていない」と、同紙で東洋大学入試部次長が吐露している。
なるほど、少子化で経営の苦しくなってきているところも多い大学業界である。全国的に有名な東洋大学がさほどの苦境にあるとは考えにくいが、先手を打って経営のスリム化に取り組んだのだろう。まずは、イメージ戦略時代はもう時代遅れとムーミンから離れ、次に若者は活字なんか読まないと紙から離れた。たぶん、そういう流れだったのだと思う。
とはいえ、「大学案内」自体は、受験生を集める上でもきわめて重要なコンテンツだ。それを「すべてがそろうWebサイト」化した結果、どんなことになっているのか。東洋大学の入試情報サイトの中に、たとえば「TOYO Channel」というコンテンツがある。そこには、大学とはどんなところか、どういう学びをするのか、をとってもわかりやすく解説する読み物や動画などが揃っている。