テレビ離れが叫ばれる中、今年これほどまでテレビドラマがヒットすると誰が予想しただろうか。もちろん、NHKテレビ小説「あまちゃん」とTBS日曜劇場「半沢直樹」のことである。
だが、2つの作品が人気を博した要素をひとつずつ並べていくと、今年1年を象徴するあらゆる「ヒットの法則」が、まるで“数珠つなぎ”のように関連性を持ってくるから不思議だ。
当サイトでは昨年に引き続き、『日経エンタテインメント!』編集委員の品田英雄氏に2013年のトレンドを総ざらいしてもらった。
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「あまちゃん」と「半沢直樹」に共通しているのは、視聴率が確実に稼げる著名な俳優や女優を起用せずにヒットしたことです。
無名に近かった能年玲奈と個性派俳優の堺雅人。結果的に2人は“はまり役”となったわけですが、スター性のある「人」に頼らず「企画力」で勝負する時代に入ったことを印象づけました。
企画優先の配役は、2人のオーバーでわざとらしいセリフが受けたことでも花開きました。
なにも「じぇじぇじぇ」「倍返し」だけではありません。林先生の「今でしょ」のポーズもそう。つまり、普通で自然な姿勢が好まれる傾向から、派手でインパクトのあるキャラクターに皆が惹かれている。長らく続いた安全志向に飽きている証拠です。
そういう意味では、ヒットの発信源は「辺境」がキーワードといえます。
ゆるキャラや地方アイドル、ゴールデンボンバーにしてもメインストリームから外れたところから出ています。面白くて新しいキャラであれば、たとえ非公認であっても、たとえばネット住民の目に触れ、拡散することで一気にメジャーにもなれるのです。
さらに派手さに注目してみると、商品開発にも活かせる興味深いテーマが浮かび上がります。地味なモノトーンがオシャレだった時代から、カラフルで強い色使いが受けています。
メンバーのイメージカラーを打ち出す「ももいろクローバーZ」やポップなファッションが人気の「きゃりーぱみゅぱみゅ」。それだけではありません。トヨタが限定生産した「ピンククラウン」や、登場人物に色の名前が付けられた『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(村上春樹著)が売れたのも、時代に即した色使いの妙といえるでしょう。