「大泉洋さんの人気におんぶにだっこで付いていく」と笑う藤村氏
2002年にレギュラー放送を終了したものの、いまだに人気が衰えずに不定期で新作を発表している旅バラエティー番組の『水曜どうでしょう』(北海道テレビ制作)。
昨年は2年半ぶりとなる新作『初めてのアフリカ』が放送されたほか、夏には札幌に5万人を集めたイベント「水曜どうでしょう祭UNITE2013」が行われるなど、水どうファンにはたまらない1年になった。
人気の秘密は、大泉洋さん、鈴井貴之さんという出演タレントの軽妙なトークに加え、番組の生みの親であるディレクターの藤村忠寿さん、嬉野雅道さんを交えた4人の掛け合いが見所のひとつになっている。
当サイトでは、いまや名物ディレクターとなった藤村さんに「2014年どうでしょう軍団の野望」について聞いてみた。
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この原稿は「2014年の水曜どうでしょうの野望」というテーマで書いてほしいという依頼なんですが、この番組には残念ながら野望なんてものはまったくないんですよね。むしろ地道で、実現できそうなことをいつも考えています。
確かに番組の企画としては「ヨーロッパ21か国を1週間で完全走破する!」とか「四国八十八か所を3日で回る!」とか声高に野望めいたことは口走りますけど、そのほうが番組上ハデなんで言ってるだけで、別に途中でやめたっていいって、いつも僕は心の中で思ってるんですよね。
そんな無理なことを躍起になってやるより、目の前で起きることを着実に面白くしていくことのほうが番組上はずっと大事なことですからね。でも口では「やり遂げましょうよ!」と言いますよ。あくまでも景気付けに。でまぁ実際、どちらの企画もやり遂げてませんし、それでいいと思ってます。
「野望」ってのは、現時点で実現の可能性が低いからこそ野望であって、手が届きそうなことは野望とは言いませんよね。「野望」を口にする人は確かにハデでカッコいいけれど、僕からすればどこか現実逃避してるような印象を受けるんです。「あなたね、もっと目の前のことを真剣に考えなさいよ」って。「手の届くことから着実にやりなさいよ」って。
「水曜どうでしょう」という番組がずっと考えているのは「なるべく長く番組を続ける」ってことだけです。だから、たとえば、視聴率は気にしない。だって、視聴率の上下にとらわれて番組を作っていたら、作り手は常に斬新な企画を求められ、出演者は旬が過ぎれば変えられて、見た目を新しくすることだけをみんなで追求し、やがて疲弊してしまうから。
「新しくする」って、すごく疲れることなんです。だから、新しいこともしない。「でもそんなことで視聴者は満足するんですか?」って思われるかもしれないけれど、でも、実は視聴者って、そこまで新しいことを求めているとは思えないんです。
むしろ、変わっていくことを哀しみ、ずっと変わらないでいる姿に安心するってこと、どんなことにもあるでしょう。「とはいえ視聴率が低ければ番組が打ち切りになるでしょう?」とも思われるかもしれませんが、そのために地道にDVDを10年間作り続け、グッズにも力を入れて収入を確保していますから、たぶん打切りになることはありません。そこはもう盤石です。