兵器の美少女擬人化。「艦隊これくしょん~艦これ~」のブームにより、突如多くの人の目に触れることとなった異色のコラボレーションは、どのようにして生まれたのか。萌えミリタリー専門雑誌『MC☆あくしず』副編集長の浅井太輔氏に、その起源と発展について聞いた。
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――兵器や武器をかわいい女の子に擬人化するというのは最近の現象なのでしょうか?
浅井太輔(以下、浅井):兵器を女の子に擬人化するというのは、かなり昔からある発想です。たとえば、第二次世界大戦中のドイツ軍によるティーガー戦車の公式教本「Tigerfibel」をみると、セクシーな女性のイラストがたくさん出てきます。ティーガー戦車を女性に擬人化して、女性に対するのと同じように優しく誠意をもって扱えば、女性と婚約できるように戦車とも上手く付き合えると説明しています。
太平洋戦争前の日本でも、ミリタリーとは少し違いますが豪華客船を擬人化したポスターが残っています。日本郵船が1940 年の新田丸、八幡丸、春日丸の処女航海にあわせて、美しい着物姿の三姉妹を船にみたてたものです。これらの客船は、のちに空母に改造されました。
――これは本当の擬人化で艦これのように美少女にメカを付けたような形状ではないですね。
浅井:メカ擬人化のはしりと思われるものとしては、1980 年代に「機動戦士ガンダム」のモビルスーツを擬人化したMS 少女というものがありました。1990 年代になると模型雑誌「モデルグラフィックス」誌に艦船を擬人化したイラストが載るようになります。インターネットが普及した2000 年代ごろからは、ネット上でのイラストのやり取りが多くなります。とはいえ、まだ同好の士が絵を見せ合って楽しむ程度のものでした。
その後、MS少女などの影響を受けた世代が第一線で活躍し始めたことで、機械と美少女をあわせたメカ少女や擬人化が商業物にも登場するようになりました。アニメ「ストライクウィッチーズ」の原作、「スカイガールズ」や「ガールズ&パンツァー」のキャラクターデザインも担当しているイラストレーターの島田フミカネさんが代表的ですね。
――商業物では、兵器の擬人化、とくに美少女とのつながりはどのように表現されていったのでしょうか?
浅井:擬人化ではありませんが、萌えミリタリーアニメなどを振り返ると分かりやすいです。2003 年には女の子が戦闘機に乗り隕石を迎撃する「ストラトス・フォー」、2006 年には女の子が戦闘機のようなパワードスーツに身を包んで戦う「スカイガールズ」、女性乗組員が護衛艦で海賊と戦う「タクティカルロア」が制作されました。「タクティカルロア」は海上自衛隊が協力したことでも話題になりました。
さらにシューティングゲームではスクール水着に似たコスチュームを着たメカ少女が戦う「トリガーハート エグゼリカ」がリリースされています。ただ、ここまでは近未来を舞台としたSFテイストの萌えミリタリーものが多かったですね。同じ2006年には弊社で萌えミリタリー雑誌「MC☆あくしず」が創刊されています。
そして2008 年に「ストライクウィッチーズ」というアニメがヒットします。登場する美少女たちは第二次世界大戦のエースパイロットを彷彿とさせる設定で、当時の戦闘機のようなパーツを装備し、セクシーな格好で謎の敵と戦うストーリーでした。このアニメが大ヒットしたことによって、第二次世界大戦をそのままモデルにした作品でも違和感なく受け入れられるという証明もされました。