2014年の「食」は何が「来る」のか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が予想する。
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2014年が幕を開けた。およそ1年前に行った2013年の予想では「第四の肉」「アーモンド」「発酵食の日常化」「食べながらダイエット」「やわ系うどん」などを挙げたが、今年の「食」はどうなるのか、またも予想をしてみたい。
まずテッパンで来るのは「コンビニ健康食」というトレンドだ。2013年12月の「ローソンVSセブン 低糖質食品でバトル」という記事でも書いたように、11月にセブン-イレブンの「サラダチキン」(薄く味をつけた蒸し鶏)が大人気となって品切れに。ローソンのブランパン(小麦ふすまを使った低糖質パン)もようやく認知を確たるものにした。
各コンビニは他チェーンの動向をよく見ている。淹れたてコーヒーやホットスナックなど、他チェーンで好調なアイテムを、迷わず導入する傾向がこの数年ますます強くなってきた。「サラダチキン」の好調ぶりを体感したセブン-イレブン、中期事業計画で「健康」を打ち出すローソンの両大手はもちろんのこと、さらなる“健康食”が、各コンビニから展開されるはずだ。
今後長く続く流れとしては、高級料亭・割烹と居酒屋の間に位置するような「本格カジュアル和食店」が明確に台頭する年にもなる。「和食の無形文化遺産登録」や「ミシュランの獲得星数世界一」を引き合いに出すまでもなく、「日本の食」を目当てに来日する外国人観光客は増えている。極端な重層化・濃厚化が進んでしまったラーメンスープの反動や、健康志向も相まって「薄味の出汁」も存在感を強くするはずだ。
いっぽうで、「食のスローレジャー化」も進行する。2013年に流行した「カジュアル×高回転率店」などの極端な業態には、行列や店内の雰囲気など何らかの制約があった。そのサービスを体感した人には、「ゆったりと上質な物を食べたい」という欲求も生じる。「老舗回顧」ブームや、旅とのミクスチャーでオトク感の強い、オーベルジュ(※1)のような業態も活気づくだろう。上質な料理を提供する温泉宿や、精進食を供する禅寺など「和風オーベルジュ」とでも言うような、時間をかけて和食を供する施設にさらなる光が当たる。
「小規模飲食チェーンの台頭」もあるだろう。個人経営の飲食店でも、アベノミクスという追い風に加え、クラウドファンディング(※2)など資金調達の手法も豊富になってきた。数店程度なら質を安定させやすいのは、餃子の「正嗣」(栃木)、あんかけスパの「ヨコイ」(愛知)、うどんの「牧のうどん」(福岡)など各地の中小飲食チェーンの先行者たちが証明している。「焼き」や「揚げ」の技術が全体的に底上げされた「焼き鳥」や「とんかつ」など、名店からののれん分けも増え、「庶民食の底上げ」にも拍車がかかる1年になりそうだ。