チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は2013年11月、京都で本誌の単独インタビューに応じた。新疆ウイグル自治区やチベット自治区における中国当局の弾圧を非難し、中国共産党による一党独裁体制は「富の分配」や「労働者階級による統治」を目指したマルクス主義からかけ離れており、民衆の支持を得ていないと語った。
インタビューの途中、「この問題は、きちんと説明しなければ伝わらない。私の言葉を適当につまんで報じてもらいたくない」と珍しく険しい表情で忠告するほど、話はデリケートな政治問題にまで及んだ。
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我々チベット人が難民になって以来、自然に新疆ウイグル自治区から逃れたウイグル人難民とも交流し、1990年頃、インドのデリーで初めて両者の会議が開催された。その後、私は米国や欧州各国でウイグル人難民と会うようになり、ここ数年、中央チベット政府(チベット亡命政府)と亡命ウイグル人グループの代表は連絡を密にしている。
彼らのなかには暴力を肯定するグループと否定するグループがあり、世界ウイグル会議のラビア・カーディル議長は後者だ。私はこれまで彼女と数回会って話をした。彼女は、非暴力こそ最高の手段であること、中国からの分離独立ではなく自治を確立することに賛成し、我々の立場は完全に一致した。
ただし、私は新疆の状況は非常に厳しいと思っている。漢族(中国人)はイスラム教やイスラムの伝統、文化、考え方に偏見を持っており、ウイグル人を差別している。これは政治的、宗教的な問題で、自治区政府や民衆はウイグル人の立場を尊重しなければならないのに、現実は弾圧している。
そして、ウイグル人のグラスルーツ的(暴力的)行動は多くの問題を生んだ。これは中国人にとっても居心地の良い状態ではない。本来ならば、まず中国人がウイグル人に寛容な態度を示すべきだ。そこから互いに尊重しあう土壌が生まれる。チベット人も中国人を兄弟姉妹と思って尊敬しており、中国人を否定するような態度や行動をとらないように気をつけている。
私は非暴力的なアプローチが多くの中国人の共感と支持を得ていると感じている。特に中国の知識階層は全面的に我々と一体であると思う。
一方、新疆ウイグル自治区では数年来、多くの暴力的な事件が起き、状況はチベット自治区より悪化している。もし暴力が有効な手段ならば、新疆の状況は改善されているはずだが、そうなってはいない。新疆のウイグル人は極めて悲劇的な状況に直面している。私はウイグル人も暴力を用いるべきではないと考える。