国際情報

ダライ・ラマ チベットは中国に留まり高度な自治獲得すべき

 チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は2013年11月、京都で本誌の単独インタビューに応じた。新疆ウイグル自治区やチベット自治区における中国当局の弾圧を非難し、中国共産党による一党独裁体制は「富の分配」や「労働者階級による統治」を目指したマルクス主義からかけ離れており、民衆の支持を得ていないと語った。

 インタビューの途中、「この問題は、きちんと説明しなければ伝わらない。私の言葉を適当につまんで報じてもらいたくない」と珍しく険しい表情で忠告するほど、話はデリケートな政治問題にまで及んだ。

 * * *
 我々チベット人が難民になって以来、自然に新疆ウイグル自治区から逃れたウイグル人難民とも交流し、1990年頃、インドのデリーで初めて両者の会議が開催された。その後、私は米国や欧州各国でウイグル人難民と会うようになり、ここ数年、中央チベット政府(チベット亡命政府)と亡命ウイグル人グループの代表は連絡を密にしている。

 彼らのなかには暴力を肯定するグループと否定するグループがあり、世界ウイグル会議のラビア・カーディル議長は後者だ。私はこれまで彼女と数回会って話をした。彼女は、非暴力こそ最高の手段であること、中国からの分離独立ではなく自治を確立することに賛成し、我々の立場は完全に一致した。

 ただし、私は新疆の状況は非常に厳しいと思っている。漢族(中国人)はイスラム教やイスラムの伝統、文化、考え方に偏見を持っており、ウイグル人を差別している。これは政治的、宗教的な問題で、自治区政府や民衆はウイグル人の立場を尊重しなければならないのに、現実は弾圧している。

 そして、ウイグル人のグラスルーツ的(暴力的)行動は多くの問題を生んだ。これは中国人にとっても居心地の良い状態ではない。本来ならば、まず中国人がウイグル人に寛容な態度を示すべきだ。そこから互いに尊重しあう土壌が生まれる。チベット人も中国人を兄弟姉妹と思って尊敬しており、中国人を否定するような態度や行動をとらないように気をつけている。

 私は非暴力的なアプローチが多くの中国人の共感と支持を得ていると感じている。特に中国の知識階層は全面的に我々と一体であると思う。

 一方、新疆ウイグル自治区では数年来、多くの暴力的な事件が起き、状況はチベット自治区より悪化している。もし暴力が有効な手段ならば、新疆の状況は改善されているはずだが、そうなってはいない。新疆のウイグル人は極めて悲劇的な状況に直面している。私はウイグル人も暴力を用いるべきではないと考える。

関連キーワード

関連記事

トピックス

同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
入場するとすぐに大屋根リングが(時事通信フォト)
興味がない自分が「万博に行ってきた!」という話にどう反応するか
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
初めて沖縄を訪問される愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
【愛子さま、6月に初めての沖縄訪問】両陛下と宿泊を伴う公務での地方訪問は初 上皇ご夫妻が大事にされた“沖縄へ寄り添う姿勢”を令和に継承 
女性セブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
“極度の肥満”であるマイケル・タンジ死刑囚のが執行された(米フロリダ州矯正局HPより)
《肥満を理由に死刑執行停止を要求》「骨付き豚肉、ベーコン、アイス…」ついに執行されたマイケル・タンジ死刑囚の“最期の晩餐”と“今際のことば”【米国で進む執行】
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン