出す人は減ったが、まだまだお正月に年賀状は欠かせない。しかしそこには一定のマナーが必要では、とフリーライターの神田憲行氏が考察する。
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私は毎年だいたい100枚くらいの年賀状を出して、同じくらいの枚数の年賀状を受け取る。ご無沙汰している人の近況の知らせや、普段よく会っている人から思わぬセンスの良い年賀状を受け取ったり、楽しい。
今年も元旦のポストに届いた年賀状を自分宛と妻宛に仕分けしていて、ハッとして妻に悟られぬようにこそこそ隠した1枚があった。
「今年も飲みに行きましょうー」
手書きの挨拶でそう書き込んであった。4人ぐらいのグループで1度だけ飲んだことがある女性からで、そんなに親しくもない。しかし以前にも女性から同様の書き込みがある年賀状を妻が発見し、ちょっと妻の雰囲気がおかしくなった。
こういう社交辞令の書き込みで家庭内に要らぬさざ波を起こす行為を、私は「年賀状テロ」と呼んでいる。
考えすぎと言われるかもしれないが、実際、夫宛に来た女性からの年賀状を気にする妻族はいる。
「女性から夫宛に『○○さんとじゃないとダメです。また共にお仕事しましょう』と書いてあった年賀状にはモヤモヤしました。旦那さんに聞いたら『えっ会社の後輩だよー』でしたが」(30代女性)
「書かれてたら、モヤっとしますね。プラス、本人以外の人が目を通す可能性のある年賀状に、不用意な一言を書いてしまう相手のスキルにイラっとしてしまうと思います」(40代女性)
「独身女性から旦那宛の年賀状で 『元気??また飲みに行こうよ!』のようなコメント付きだったので、結婚しました感を前面に押し出した新婚ラブラブ年賀状を送り返してやった」(30代女性)
ちょっと周辺に聞いただけでこれだけ証言が集まるのだから、潜在的に「モヤモヤ」する妻は多いに違いない。しかもこれは日本人だけではないようだ。ベトナム人の妻を持つ男性からの証言。
「私宛に届いた年賀状を、妻が『これは男性から? これは女性から?』と仕分けをして、『女性の比率が高すぎる。これは結婚した男性として問題だ』と詰問されました。比率は女性からが3分の1くらいだったんですが。年賀状に書かれた内容がわからないベトナム人の嫁でも、数はごまかせません」
来ただけで怒られちゃうのだから頭を抱えるしかない。
しかも「飲みに行きましょうね」と書いた側に、なんの「罪の意識」もないのがやっかいだ。