国内

首相の靖国参拝 A級戦犯合祀発覚から7年中国は何も指摘せず

靖国神社の総敷地面積は東京ドームの2倍強

 地下鉄九段下駅から坂を上ること5分。目の前には日本最大級、高さ25メートルの大鳥居がそびえ立つ。「靖国神社」だ。拝殿までの参道は長く700メートル。総敷地面積約10万平方メートルは、実に東京ドームの2倍強にも及ぶ。

 年末、安倍首相の突如の参拝が中国・韓国の抗議だけでなく、米国までもが「失望」と声明を出す想定外となった靖国参拝だが、境内を歩きながら、改めて「靖国問題」とは何かをみていきたい。

 靖国神社の歴史は明治2年に始まった。戊辰戦争の官軍側戦没者を慰霊顕彰するため、明治天皇によって創建された東京招魂社が前身である。戦後は、GHQの指令で国の管理を離れ単立宗教法人になり、現在は神道ではあるが、全国の神社を統括する宗教組織・神社本庁には属していない。

 祀られているのは、幕末から太平洋戦争まで、国のために亡くなった軍人、軍属、準軍属など約250万柱。そのため、賊軍だった西郷隆盛や戦死でない東郷平八郎や乃木希典は合祀されていない。

 だが、それはあくまで本殿の話。今回初めて現職首相が参拝したことで注目を集めた本殿南に佇む「鎮霊杜」。ここでは国籍を問わず国内外すべての戦没者を慰霊している。安倍首相は、外国人も慰霊される施設を参拝することで中国・韓国の批判をかわそうとしたとみられる。

 では、ご祭神はどこにどのようなかたちで祀られているのか。鎮霊杜から本殿裏に廻ると、非公開の施設「霊璽簿奉安殿」がある。

「合祀される場合、霊璽簿にお名前を記して本殿の正床に移し、霊璽簿に宿った神霊をご神体に鎮めるのです。神霊が離れた霊璽簿は奉安殿に納められます」(神道学者の高森明勅氏)

 中国や韓国は、戦争指導者だったA級戦犯を合祀する靖国神社への参拝を非難する。参道の神門には中国人による放火の跡が残っており、その怒りを物語る。

 だが、歴史を辿れば靖国神社にA級戦犯が合祀されていることがわかった昭和53年から7年間、歴代首相が20回参拝を繰り返しても中国は何の指摘もしていない。昭和60年の終戦記念日に中曽根首相が参拝したときに初めて非難の声を上げたにすぎない。靖国問題はほかに、「公人」である首相の参拝が政教分離の原則に触れるのではないかという憲法問題も議論されている。

 世界では米国のアーリントン墓地のように戦死者を慰霊する施設が問題視されることはない。様々な議論があるが、百聞は一見にしかず。まずは一度訪れることをお勧めしたい。

撮影■太田真三

※週刊ポスト2014年1月31日号

関連記事

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
【約4割がフジ社内ハラスメント経験】〈なぜこんな人が偉くなるのか〉とアンケート回答 加害者への“甘い処分”が招いた「相談窓口の機能不全」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
【被害女性Aさんが胸中告白】フジテレビ第三者委の調査結果にコメント「ほっとしたというのが正直な気持ち」「初めて知った事実も多い」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン
記者会見を行ったフジテレビ(時事通信フォト)
《中居正広氏の女性トラブル騒動》第三者委員会が報告書に克明に記したフジテレビの“置き去り体質” 10年前にも同様事例「ズボンと下着を脱ぎ、下半身を露出…」
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン