目前に迫ったソチ五輪。注目の女子フィギュアスケートは、ここに来て、米・ロの若手たちの勢いがいい。
先日行われた欧州選手権でロシアの15歳、ユリア・リプニツカヤが今季世界最高点で初優勝。全米選手権では、国内大会のため参考記録ながら200点を超える高得点で、18歳のグレイシー・ゴールドが初優勝。バンクーバーに続き浅田真央とキム・ヨナの一騎打ち――と見られていた金メダル争いに新星たち加わり、氷上の戦いはヒートアップしている。
リプニツカヤとゴールドは二人とも、3回転ルッツ+3回転トーループの高難度コンビネーションを跳ぶ。このジャンプをプログラムに入れている有力選手は、現段階ではほかに、キム・ヨナのみ。成功すれば、浅田の代名詞トリプルアクセル以上の得点となる。
リプニツカヤの強みはもう一つ、スピンだ。180度開脚して高速回転する“キャンドルスピン”など、見るものを驚かせるスピンは高得点を叩きだす。ジャンプと違ってスピンは失敗が少ないため、安定的な得点源となっている。
さらに、15歳という若さも追い風になっているようだ。「成長期の体形変化でジャンプに苦労する女子選手が多いなか、リプニツカヤは、その前にオリンピックに出られる。これはラッキーなことだと思います」と、フィギュアに詳しいスポーツライターは語る。
フィギュアスケートのオリンピック出場資格は、オリンピック開催前年の7月1日に15歳になっていること。浅田は9月生まれのため、トリノ五輪に出場できなかった。リプニツカヤは6月生まれのため、出場可能なのである。期限“1カ月前”の滑り込みセーフ。一方で若さは、表現力という点においては不利ではないのか。
「リプニツカヤのフリーは『シンドラーのリスト』。映画に登場した赤い服を着た少女を演じています。浅田選手らお姉さんたちに比べると、表現力やスケーティングは見劣りしますが、その幼さを逆手にとるように、15歳の今しかできない演目を選んできた。このプログラムは高く評価され、演技構成点が上がってきています。不安要素は、地元開催の重圧でしょう。初の五輪の上に地元。プレッシャーのかかるなかで自分の演技ができるかが、鍵になるのではないでしょうか」(日本スケート連盟関係者)
フィギュア大国ロシアは、実はいまだかつて、女子シングルの金メダルはない。地元開催で悲願の金メダル獲得となるか。リプニツカヤに続き欧州選手権2位に入ったロシアのアデリーナ・ソトニコワ(17)にも期待がかかる。