表札のない監視カメラ付きの門を潜ると長い小径。奥には自宅の母屋と陶芸工房。路地脇の斜面には瀟洒な茶室が拵えてある。温泉街の喧騒を離れた、そこは四季折々の木々に囲まれ、耳を澄ませば清流のせせらぎが聞こえる、まさに風雅の世界。細川氏の自宅「不東庵」である。
神奈川県湯河原。細川護熙元首相が東京都知事選に出馬表明をする1か月前、本誌はタレント・壇蜜との対談取材のため、細川氏の自宅「不東庵」を訪ねていた。60歳で政界を引退して以来15年間、ここで作陶や書画にいそしむ隠棲生活を続けてきた殿だが、その生活たるやあまりにも“浮世離れ”。
記者が工房に無造作に並べられた茶碗の一つを手にとり、値段を聞けばなんと20万円。壺にいたっては100万円以上するものもあるとか。瀟洒な茶室は世界的な建築家・藤森照信氏によるものという。現在は、作陶の生活の他に、奈良の名刹・薬師寺から頼まれて、襖絵の制作中というから、何もかもが別世界。
しかも、殿にはプライスレスな財産がある。殿が理事長を務める東京・目白台の「永青文庫」だ。ここには細川家に伝来する国宝や重要文化財、約6000点の美術工芸品などを収蔵しており、その中には織田信長、豊臣秀吉らの直筆の書状も含まれている。
同じ都知事候補・舛添要一氏も、奇しくも殿と同じ湯河原の別荘の他約10億円の資産を持っているといわれるが、浮世離れ度の差は歴然。優雅な殿はこの“憂き世”をどう改革するのか。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2014年1月31日号