そもそもメニュー名に材料をすべて盛り込めというのは、無理がある。メニュー表にはスペースに限りがある。原材料をいちいち品名に盛り込んでいたらキリがない。
「種」として異なる、「バナメイエビ」を「シバエビ」と表示するのはNGだが、「小エビ」「エビ」は当然OKだろうし、脂肪注入肉──成形肉についても「成形肉」だというただし書きの表示義務を課せばいい。
構造で考えれば「安くていいもの」はそうそうないはずだ。なのに、一部の消費者は「もっと安く」「もっといいものを」とヒステリックな声をあげてきた。今回、間接的にではあっても、偽装を生み、ガイドラインが必要な状況を作ったのは、消費者自身でもあるはずだ。
日本では、表意文字で文化が形成されてきた。食文化も例外ではない。「鮭」は魚へんに圭(三角形にとがった、形がいいという意味)と書き、「肉」という漢字は肉の断面の筋繊維を模した象形文字から発展したとされる。こうした「食文化」もメニュー名には込められている。
消費者庁は「できるだけ早く正式なガイドラインを出したい」としたと言う。一度制定されると修正の難しいこの国で必要なのは「食の安全と食文化を守るための適切なガイドライン」を設定することであって、「早く正式なガイドラインを発表」することではない。消費者庁の担当者は「ガイドラインが求められてしまったのが一番残念」と言った。その「残念」という気持ちが反映されたガイドラインを強く求めたい。