ライフ

一見善良で優しそうな老人が店で「理不尽な人」と化した瞬間

 近年急増する「ホワイト・モンスター」こと、理不尽な人。身近な人でも、ある日、急に豹変してモンスターと化す瞬間がある。新刊『理不尽な人に克つ方法』(小学館新書)を上梓したばかりの、元刑事でクレーム対応のプロの援川聡(えんかわ・さとる)氏が、「ホワイト・モンスター」の実例として、自身の目撃談を語る。

 * * *
「かけがえのない時間がぶち壊しじゃないか!」。突然、ひとりの老人が立ち上がり、和食レストランで大声を張り上げました。そのすぐ横では、泣きべそをかいている幼児を、その両親とおぼしき人があやしています。ウエイターが慌てて駆けつけました。

「お客さま、どうなさいましたか?」
「お前のところは、すぐに倒れるような椅子を使っているのか! 椅子が倒れて孫が落ちたんだぞ! 孫が怪我をしたら、どうしてくれるんだ!」
「申し訳ありません。お孫さんは大丈夫ですか?」

 老人の顔は真っ赤。口角泡を飛ばし、叱責を続けます。「大丈夫なわけがないだろう。こんなに泣いているじゃないか!」。一見したところ、子どもに外傷はなく、涙を拭ったあとはあるものの、すでにケロリとしています。一緒にテーブルを囲んでいた若夫婦の説明によれば、満腹になった子どもが足をばたつかせて遊んでいるうちに、椅子から転げ落ちてしまったようです。大騒ぎするほどのことではありません。

 ところが老人は、ウエイターに掴みかからんばかりの剣幕です。ウエイターはなにがなにやらわからず、オロオロするばかりですし、若夫婦は恐縮しています。私を含め、周囲の客は眉をひそめています。八つ当たりとしか思えない老人の振る舞いですが、私が見たところ、入店早々から不穏な気配を漂わせていました。商売柄、気にしてみていたのです。

「テーブルが汚れている。すぐに布巾を持ってきなさい」「子ども向けのメニューが少ないな」「飲み物を注文したのに、まだ来ない」

 ウエイターやウエイトレスが近くを通りがかるたびに、老人はなにかと文句を言うのです。見かけは、というとこざっぱりしており、善良で優しそうな老人です。困窮しているようにも見えませんし、むしろお金持ちの部類でしょう。

 ではなぜ、そんな好々爺が店員に食ってかかるような真似をしたのでしょうか。私は騒ぎが収まった後、「大変でしたね」と若夫婦にさりげなく声をかけ、背景を探ってみました。断片的な言葉をつなぎ合わせると、こんな像が浮かび上がってきました。

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン