日本人の耳に入ってくる韓国報道といえば、あいかわらず「反日」「反日」のオンパレード。だが、実は韓国国内では、朴槿恵(パク・クネ)政権に対して対日政策の転換を求める声が大きなムーブメントになりつつある。それが、日本とうまく付き合い、利用すべしという「用日論」だ。
「用日論」がメディアに登場したのは、韓国大手紙の『中央日報』(2014年1月9日付)の社説「政府、『用日』の世論に耳を傾けるべき」が最初だ。記事にはまずこうある。
〈昨年、日本の対韓国直接投資は40%、日本人観光客は23%減った〉
続けて、峨山政策研究院の調査結果として、〈中国の浮上を考慮して韓日間の安保協力が必要だという意見が63.9%にもなった〉といった数字を挙げ、〈韓日首脳会談の開催については賛成(49.5%)が反対(40.7%)を上回り、韓日関係改善のために大統領が積極的に取り組むべきだという比率も57.8%にもなった〉とし、そのうえで、〈国民の相当数が、「用日」の観点で対日関係改善を望んでいると見られる〉と述べている。
最後の締めでは、〈原則よりも、国家の利益がさらに重要だ〉と結ぶ。
しかし、自分たちが困って助けを求めているのに、「日本を利用せよ」とは、何たるご都合主義。日本人からしたら“いい加減にしろ”と言いたくなる。産経新聞編集委員の久保田るり子氏がこう指摘する。
「さりとて、韓国はいままで竹島や慰安婦、靖国などで日本を叩きまくってきたので、その姿勢をいきなり変えるわけにもいかない。そこで、従来の姿勢を変えずに、『しかしながら』という前提で出てきたのが用日論なのです」
これまでにも韓国では、「反日」や「親日」以外に、こういった「○日」という造語がいくつもあった。植民地時代に日本に対して行なわれた抵抗活動は「抗日」で、成功した日本を研究せよという意味で1980年代に使われたのが「知日」、その後、日本に追いつけ、追い越せという意味で「克日」という言葉が生まれた。
「用日」は、本来、「克日」で追い越したはずの日本に改めてすり寄らざるを得ない事情を、利用するという「上から目線」のスタンスでごまかそうとする国民感情が背景にある。
筑波大学大学院の古田博司教授(東アジア政治思想史)は、そうした「上から目線」の根底にあるのが「小中華思想」だと指摘する。
「自己の文明を世界の中心と考えるのが明国(中国)の中華思想で、明国の兄弟国を自認した李氏朝鮮は、日本をはじめとする周辺の野蛮な国に、礼や文物を教えてやる立場だと信じていた。これが小中華思想で、ときに他国に対して威圧的、強権的、差別的になるところは現在の国民性にも通じます。
彼らにとって日本はいまなお野蛮な夷狄(いてき)のまま。にもかかわらず、日本が韓国を遥かに上回る文明国となったことが我慢ならないわけで、だからこそ、日本を正当に評価しようとはしない。これまで苦しんでいた日本経済が、ここのところうまくいき始めたことから、日本をうまく利用してやろうという傲慢さが、用日論という考え方の背景にあるのです」