「(慰安婦は)戦争地域にはどこでもあった」「政府が右ということを左というわけにはいかない」などと就任会見で発言し非難を浴びたNHK新会長・籾井勝人(もみいかつと・70)氏。
籾井氏の“失言癖”のルーツはどこにあるのか。同郷の麻生太郎・副総理にもべらんめえ口調や“舌禍体質”は通じるところがあるが、福岡県の高校時代の同級生は意外なエピソードを明かす。
「三井物産副社長の時も一人で出張に行っていた。航空券やホテルの手配も自分で行なうように心掛けていたみたい。『秘書を連れて出張なんかに行くと、いくら別のホテルに泊まるといっても、何らかの関係が疑われかねないから』と。
(その後社長を務めた)日本ユニシス時代に地元の講演会に呼ばれた時も、謝礼を『地元のために使ってほしい』と即座に返していた。驕ることもない、用心深い男でした」
では、最も慎重に答えなければならない慰安婦問題において、なぜあのような言葉を発したのか。かつて籾井氏が参加した経営者の集いの中で、司会を務めたジャーナリスト・須田慎一郎氏はこんな見方をする。
「籾井さんは、石橋を叩いて渡る経営者が多い中、飛び跳ねた発言をするということで人気があった方でした。ただし、絶対に自分は正しいんだという思い込みが強い人でしてね。
私が、終身雇用、年功序列といった日本的経営について、『そろそろ見直す時期が来ているのでは』と籾井さんに振ったら、猛烈に批判してきた。それもこちらの問いには答えず、自分の主張を延々と……。私も座を盛り上げるため、わざと挑発するように振ったテーマでしたが、見事にそこに噛みついてきたわけです。
今回の会見と構図は同じ。記者は何らかの意図や思惑を持って質問するわけですが、まんまと罠にはまってしまいましたね」
それでも籾井氏の発言は、公共放送のトップとして“失言”で片付けられるものではない。
それは朝日新聞などが声高に批判している、籾井氏の個人的な歴史認識が正しいか間違っているかという問題ではなく、「政府が右ということを左というわけにはいかない」という“見識”だ。自らを“安倍政権の走狗”といっているも同然の籾井氏の言動について、上智大学・田島泰彦教授(メディア法)は厳しく批判する。