「建国以来最大規模」といわれる血の粛清劇が、北朝鮮で繰り広げられている。金正恩第1書記の叔父で、政権ナンバー2だった張成沢・前国防副委員長をはじめ、その直系親族全員が処刑されていたのだ。コリア・レポート編集長の辺真一氏の話。
「昨年12月12日に行なわれた張氏本人の公開処刑直前に、姉・張桂順とその夫の全英鎮・キューバ大使、甥の張勇哲・マレーシア大使らが次々に本国に召還されました。この1月末になって、彼らも昨年中に相次いで処刑されていたことが明らかになった。そればかりか、張大使の20代の息子2人と、張氏の実兄の子供や孫まで処刑されていたこともわかりました」
自宅マンションなどから連行される際、抵抗を試みた親族は、近所の住人が見守るなか、野犬を処分するようにその場で射殺されたという。まだ幼い子供も大人同様に銃殺され、張家に嫁いだ女性は強制的に離婚させられた上、実の両親ともども山奥の僻地に追放された──。
2011年12月、金正日総書記の死去を受け、正恩氏は翌年4月に党第1書記、国防委員会第1委員長などに就任し、北朝鮮の最高指導者となった。その間、後見人として若き指導者を支えてきた張氏が電撃失脚したのは昨年11月。これが、怒濤の粛清劇の発端だった。
張氏の処刑の罪状は「国家転覆陰謀行為」。張氏に判決を言い渡した裁判などによると、貴重な地下資源を外国に投げ売りして国民経済を破壊させた後、自分が首相になるクーデターを企てていたとされる。
仮に張氏の陰謀が本当だったとしても、今の世で、幼い子供を含めた一族郎党を皆殺しにする国が他にあろうか。