国際情報

ソチ五輪開会式 欧米首脳不参加に露の同性愛宣伝禁止法影響

 ロシアのソチで冬季五輪が開幕した。華やかな開会式ではあったが、一部欧米の首脳は出席しなかった。その背景には何があるのか、作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が解説する。

 * * *
 ロシア・ソチでの冬季五輪は開幕前から異例の状況が続いていた。通常、オリンピック主催国は金メダルをどれだけ取るかに関心を集中する。しかし、今回は事情が異なる。ロシア政府は競技以外のところに関心事項を設けている。

 米国のオバマ大統領、ドイツのガウク大統領など欧米の首脳が早い段階から五輪開会式への不参加を表明していた。その背景となっているのがロシアで昨年成立した同性愛宣伝禁止法だ。これはプーチン大統領のイニシアティブによるものだ。

 プーチンは同性愛者に対して明らかに偏見を有している。首相時代の小泉純一郎氏がプーチンと良好な信頼関係を構築することができなかったのも同性愛問題が関係していると筆者は見ている。この点について、外務事務次官を務めた谷内正太郎氏(現・国家安全保障局長)が興味深い証言を残している。以下は同氏の講演録からの引用である。

〈(小泉氏と)プーチン大統領との間は必ずしもうまくいかなかったです。別にケンカをしたわけではないのですけれども、最初に会ったとき、イタリアのジェノバだったと思うのですけども、小泉さんがお国にはチャイコフスキーという素晴らしい音楽家がおられますねと話を始めたのです。ところがプーチンは、ひょっとしたらチャイコフスキーのことを知らなかったのかもしれないのですけれども、まったく反応しなかったのです〉(谷内正太郎『志ある外交戦略』、國民會館、2010年、42頁)

 とした上で、2回目の首脳会談についてはその前日に小泉氏がボリショイバレエを特等席で鑑賞したことを説明し、こう続ける。

〈次の日の首脳会談のときに、小泉さんは「きのうはボリショイ劇場でチャイコフスキーの素晴らしいくるみ割り人形を見せてもらった。素晴らしかった」と(中略)言ったわけですね。そうしたら大統領の答えは、「われわれが誇るボリショイ劇場をほめてくれてありがとう」と、こう言ったわけです。チャイコフスキーのことは一言も言わないのです。〉(同前)

 ロシア人でチャイコフスキーを知らない人はいない。プーチンはこの音楽家を明らかに嫌っている。チャイコフスキーが同性愛者として有名だからだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
X子さんフジ退社後に「ひと段落ついた感じかな」…調査報告書から見えた中居正広氏の態度《見舞金の贈与税を心配、メッセージを「見たら削除して」と要請》
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレが関東で初めてファンミーティングを開催(Instagramより)
《新メンバーの名前なし》ロコ・ソラーレ4人、初の関東ファンミーティング開催に自身も参加する代表理事・本橋麻里の「思惑」 チケットは5分で完売
NEWSポストセブン
中居氏による性暴力でフジテレビの企業体質も問われることになった(右・時事通信)
《先輩女性アナ・F氏に同情の声》「名誉回復してあげないと可哀想ではない?」アナウンス室部長として奔走 “一管理職の職責を超える\"心労も
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
【女占い師が逮捕】どうやって信者を支配したのか、明らかになった手口 信者のLINEに起きた異変「いつからか本人とは思えない文面になっていた」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン