東大卒のエリート内閣府職員・A氏(30)が渡航先の韓国から日本にゴムボートで密入国しようとして死亡した事件は様々な憶測を呼んでいる。韓国の情報筋はこんな見立てを披瀝した。
「A氏は日本の経済アタッシェ、つまり海外の経済情報を集めるスパイだったのではないか。その情報収集・工作中に何らかのトラブルにあったということ。だからこそ、日本政府は動かず、捜査も海保任せにして、警察もほとんど動いていない。韓国政府に捜査要請しないのもその証左だ。そもそも、彼の氏名すら公表されていないのはおかしいでしょう」
とはいえ、A氏は直接、情報活動にあたる立場にはない。日本の情報部門として米CIAや韓国・国家情報院(国情院)のカウンターパートとなる内閣情報調査室(内調)は官邸の組織であって、A氏のいる内閣府とは近くて遠い存在のはずなのだが……。菅沼光弘・元公安調査庁第二部長はこう語る。
「内調のような日本の情報機関の場合、本体の規模が小さく、人員も少ないため、いろいろな外部機関と協力関係を結び、情報収集をすることになる。キャリアからして彼がそうだとは考えづらいが、外郭団体や海外にいる人間に情報収集を依頼するケースも確かにある」
不思議なのは、韓国だけでなく日本国内でも、今回のことは捜査関係者の間で徹底した箝口令が敷かれているということだ。
だが、そんななか共通の証言が複数筋から出てきた。「A氏は公安からマークされていた」というのだ。
「事実、事件発覚当初、警視庁公安部外事二課が捜査に動いた形跡がある。箝口令が敷かれているのは事件性が高いためで、だから海保はいまだに遺体を福岡県警に渡さないでいる」(内調関係者)
いったい彼はどんな理由で公安にマークされていたのか。ある公安関係者が、驚くべき情報を明かした。