韓国版「新しい歴史教科書」は、元慰安婦まで引っ張り出した左派の妨害工作により、採択ゼロとなった(※注を参照)。その状況について、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が報告する
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日本統治時代の「正しい歴史」を記した韓国高校歴史教科書をめぐる左右両派による激しい「歴史戦争」は左派の勝利に終わった。3月からの新学期を前に、右派が初めて検定を勝ちとった「新しい歴史教科書」が学校側でまったく採択されなかったのだ。
採択率は「2352対0」。右派の完敗だった。その最大の背景は、左派による執拗な採択妨害工作だった。約20校がいったんは右派の新教科書採択を決めながら、後にすべて採択を取り消してしまったのだ。
採択を決めた学校には左派系の教員労組「全教組」や野党、市民団体、同窓生、父母などが抗議に押しかけ、脅迫電話が鳴り続けた。中には元慰安婦の老女を押し立て校長を吊るし上げるという風景もあった。韓国では元慰安婦は今や反日・民族英雄として「聖女」化され「慰安婦サマのお通り!」となるとみんなひれ伏すからだ。
慰安婦問題でいえば、新教科書(教学社版)は当初、史料として掲載した慰安婦たちがトラックで移動する写真に「韓国人慰安婦は日本軍部隊が移動するたびについて行く場合が多かった」と記述していたが、左派サイドから非難が殺到。これに押され後に「韓国人慰安婦は軍駐屯地で搾取されるだけでなく戦線に動員され強制的に連れて行かれる場合が多かった」と修正している。既存の慰安婦強制連行説への屈服である。
また日本統治時代の経済についても圧力がかかり「日本への米の輸出」を「米の搬出」に、「日本資本の進出」を「日本資本の浸透」と書き直している。前者は「搬出」とすることで日本に米をタダで持ち出したかのような印象にし、既存の「収奪史観」に妥協した記述になった。
右派の新教科書は採択実現のため妥協を重ねたにもかかわらず結果は採択ゼロだった。新教科書保護のため教育省は採択取り消しの学校に対する圧力の実態について調査まで行なったが、組織的・計画的な全国ネットによる左派の攻撃には勝てなかった。