テレビ東京が絶好調だ。視聴率ではフジやTBSを抜いて民放4位(平日午後7~11時のプライムタイム)に位置することは珍しくない。経営面でも、昨年4~9月期の経常利益の伸び率は91.5%増をマーク。昨年の年間視聴率で初の2冠を獲得したテレビ朝日を抑えて、民放トップの伸び率だ。
テレ東がここまで好調な背景には何があるのか。他局と比べて会社の規模が小さく、圧倒的な資金不足に悩む中、古くから「選択と集中」を進めたことが躍進の一因だろう。
通常、ゴールデンやプライムタイムの番組1本に在京キー局が使う制作費は1500万~2000万円とされる。しかし、テレ東の番組制作費は他局水準の半額以下となるわずか900万円弱。深夜帯だと150万円の番組もあるという。
「ゴールデンで1000万円以下なんて他局では考えられません。テレ東は企画募集の要項に予算のグラフがキッチリと記されています。『番組は予算内で作るもの』という意識がスタッフに染み付いているんです」(テレビ業界に詳しい放送作家)
『テレビ番外地 東京12チャンネルの奇跡』(新潮新書)の著者で、40代半ばという若さでテレ東の編成局長を務めた石光勝氏が振り返る。
「私が現場にいた1960年代後半から1980年代もやはり予算が少なく、他局のようなプロ野球中継、ドラマ、歌番組はテレ東ではできなかった。有名タレントもギャラが高くて使えない。
そこで、新しいことにチャレンジしました。たとえば、男子プロレスは他局が独占していたので当時はマイナーだった女子プロレスを取り上げた。視聴率はよかったけど、『低俗だ』『エログロ』とクレームが殺到して、途中でやめさせられました(苦笑)。とにかく、お金がないだけいろいろと知恵を絞りましたね」
そんな試行錯誤の末、テレ東が掘り当てた金脈が「素人いじり」だった。