オリンピックはフィギアやジャンプだけじゃない! 日本では馴染みがないが、ボブスレーにも注目して欲しい。週刊「ビッグコミックスピリッツ」で「黒鉄ボブスレー」を連載中の土屋雄民さんに、ボブスレー競技の魅力を聞いた。(取材・文=フリーライター・神田憲行)
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ボブスレーは重さ200キロ前後のソリに2人組か4人組で乗り込み、全長1200メートルから1680メートルまでのコースを滑り降りてそのタイムを競う。第1回冬季五輪から正式種目として採用されている伝統競技だ。
日本は1972年の札幌五輪から参加しているが、いまだ入賞を果たしたことがない。ソチ五輪でも男子2人組と4人組がエントリーしている。
2011年、大田区の町工場が集まり国産ソリの開発がスタート、「下町ボブスレー」として話題になった。土屋さんの「黒鉄ボブスレー」はそれをモデルにして、不況で追い詰められた町工場の人々がモノ作りを通して世界に挑戦する姿を描いている。先ごろ第1巻が発売された。
--ボブスレーについて日本人はあまり馴染みがないんですが、土屋さんはどうして惹かれたのでしょうか。
土屋:試合会場が長野にしかないので直接見る機会は滅多にないと思いますし、テレビで見てもその魅力はなかなか伝わらないかも知れません。しかし実際に見るとパワー、スピード、繊細さというスポーツの魅力がぎっしり詰まった競技であることがわかると思います。
ボブスレーは最高速度が時速130キロから150キロにも達する「氷上のF1」ともいわれます。スタートでは2人組なら前に乗る「パイロット」と後ろに乗る「ブレーカー」と呼ばれる選手がソリを押すのですが、まず彼らの肉体に注目してください。冬季スポーツでは滅多にみられない凄い肉体の持ち主ですよ。というのは重いソリを押し進めるため、選手はアメリカンフットボールなどパワー系スポーツ出身者が多いためです。
<ソチ五輪の選手村で、浴室に閉じ込められてドアを素手でぶち破った選手が大きなニュースになった。実は彼はアメリカのボブスレーの選手で、NFLの元WRだ。1メートル83、100キロという巨漢で、ツイッターで穴の開いた扉の写真とともに「ボブスレーを押す練習を生かした」とコメントした。>
土屋:それでソリが滑り出して乗り込むと、次は繊細なハンドルさばきが要求されます。僕らが高速道路で運転しているとき、ちょっとハンドルをきっただけで車体がかなり動くじゃないですか。あれと同じことがあの狭いコースの中で起きていると思っていいです。ボブスレーの操作は左右のヒモ状のハンドルを押したり引いたりするのですが、選手に伺うとだいたい親指1本分くらいの操作でライン取りがかなり変化するそうです。しかも選手はむき出しなので、海外の大会ではちょっとした操作ミスで死亡事故まで起きています。