エンディングノートや遺言書作成キットなど、いつか訪れる最期をできるだけ心安く、スマートに迎えるための“終活”が当たり前に語られるようになった。そうした中、最も身近でありながら、最大のトラブル要因になりかねないのが“お金”の話。近年、相続に関するトラブルはすでに増加傾向にある。司法統計年報によると、平成24年の遺産分割事件の件数は約1万1700件で、平成13年の約1.4倍に。また、平成24年に起きた相続トラブル(遺産分割事件のうち容認・調整成立件数)は8791件。そのうち、遺産の価額1000万円以下のケースが2849件と約32%を占めており、遺産額が少なくてもトラブルになるようだ。
こうしたケースを避けるために、資産が少なくとも、財産分与などの意思を明確にした「遺言書」がきちんとしていることが望ましい。ただし、きちんとした手続きを踏まないと、遺言書にも実は公的な効力がない――と判断されることもあり、注意が必要だ。
正式な遺言書としては、公証役場で作る「公正証書遺言」と、自分で作る「自筆証書遺言」の2種類が挙げられる。「公正証書遺言」を作るには、資産を正確に把握した後、土地・建物の登記事項証明書、遺言者や被相続人の戸籍謄本など、さまざまな公的書類を準備。その後、公証役場に行き、証人2名の立ち会いのもと口述し、公証人に代筆してもらう。「遺言書」の有効性について争われるといったトラブルは避けられるが、公的書類の準備や証人・公証人の介在など、煩雑な手続きが必要。
一方「自筆証書遺言」は、遺言者が自筆で日付・氏名・遺言の内容を記載し、押印をしたあと、自分で保管。死後、相続人が家庭裁判所にそれを持参し、内容の検認を受けることで有効となる。作成段階では、自筆で記載するといった方法自体はシンプルだが、書式が自由なため、記載内容が明確ではないことを理由に法的に無効になったり、紛失や改ざんの可能性といったリスクもある。
三菱UFJ信託銀行が行なった「相続に関するアンケート調査」(2013年12月実施 30代以上・保有金融資産500万円以上の男女1000名)によると、「相続についてどのような作業や手続きが必要か具体的に知っている」と答えた人は41.1%と半数以下。また、「相続の手続きは面倒そうなイメージがある」と答えた人は75.8%にも上る。