コンビニエンスストアよりも広く、食品スーパーよりは狭い“小型スーパー”の出店が都市部を中心に広がっている。
小型スーパーの最右翼はイオングループの「まいばすけっと」。肉や魚、野菜など生鮮食料品の品揃えを充実させるばかりか、88円のペットボトル飲料を置くなどコンビニとは一線を画す割安感も支持され、店舗数を一気に500店まで伸ばしている。
一方、コンビニ陣営も負けてはいない。100円均一を基本に惣菜や生鮮食品も数多く並べる「ローソンストア100」。そこで生鮮コンビニのノウハウを蓄積したローソンは、コンビニ型スーパーの新業態、「ローソンマート」の1号店(横浜市西区)を2月20日にオープンさせた。
オレンジ色の看板で、「ナチュラルローソン」など既存の業態と区別したローソンマートは、シニア層や働く女性、単身世帯などをターゲットに、東京・名古屋・大阪の3大都市圏で2014年度末までに100店舗の出店を目指すという。
しかし、ここまでコンビニが網の目のように出店している大都市で、小型スーパーの需要がどこまであるのだろうか。流通アナリストでプリモリサーチジャパン代表の鈴木孝之氏が解説する。
「たとえば東京の中心部を歩いてみればお分かりのように、あちこちで再開発が進んで高層マンションが建ち並んでいるにもかかわらず、生鮮食品など日常生活品を供給する食品スーパーが近所にない。もちろんコンビニはありますが、コンビニの品揃えでは生活者のニーズに応えきれていないのです」
いま日本の人口の半分は前述の東名阪地区に集中し、中でも東京圏は3割を占めている。それだけ大都市の生活者が副れ上がっているからこそ、生鮮3品(青果・精肉・鮮魚)を扱う「食品スーパーに代わる身近な業態」が求められているというわけだ。
さらに、コンビニにとっては高齢化に対応した品揃えは長年の課題だった。コンビニ業界の専門紙『コンビニエンスストア速報』編集長の清水俊照氏がいう。
「かつてコンビニも高齢者向け商品を模索したことがありましたが、高齢者=病院食みたいな勘違いをしていました。実は高齢者が食卓に並べるメニューは20年、30年前と大きく変わっておらず、変わったのは食べる量と食卓に上がるまでのプロセスなんです。
代表的なのは揚げもの惣菜で、世帯人数の減少から手間や材料などの問題で家庭で揚げものをするケースが激減しています。ただ、ニーズそのものは根強いので、揚げたものを店で買う機会は増えています」
コンビニが揚げものをはじめとする店内調理の食材を増やしているのも、若者だけでなく、高齢者ニーズに即した戦略ともいえる。
今後、「ローソンマート」が生鮮食品に強い「まいばすけっと」を押しのけて成功するためにも、「店内調理惣菜などの完成度を高めて、いかに集客力を高められるか」(清水氏)が不可欠なのだ。