古今東西の賢人による名言やことわざなどから良好な人間関係を作るためのヒントを解説した書『あいつの気持ちがわかるまで』(宝島社)を上梓した著述家の石黒謙吾さん。
同書の中には「仕事は仲間を作る」というゲーテの言葉を受けて、「人脈は、仕事して残るもの。作ってから仕事するものじゃない」と昨今の「人脈自慢」「人脈命」的な風潮に異議を唱える記述もある。石黒さんはいかにしてこの考えを抱くようになったのか。石黒さんが解説する。
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かつて一緒に仕事をしていた人が有名人好きだったんです。「誰と会った」という話ばかりしている人。彼は色々なところで酒を飲んだり、パーティに出ては、名前のある人と知り合ってくる。そのあと、電話で色々な人に「今度是非なんか仕事しましょうよ!」というようにやっていました。でも、いまいち、この人には後に「残る」仕事が成立しないんですね。無邪気で性格はいいのですが、仕事人として見るとどうにも頼りない。
彼は、明らかに人脈を先に作って、それを基に、「この人で特集をやりましょう!」「コラムをやりましょう!」と編集部に風呂敷を広げるけど、結局その企画は成立しない。企画ありきでなく人が先行しているからなんですがたぶん気付いていない。
僕は20年前からは書籍を書いたりプロデュース&編集していますが、人とのお付き合いは、ひたすら地を這うようなことの連続。まずは仕事ご一緒したい人にアポを取り、愚直なまでに誠実に連絡をし、共に腹を割って本を残す。その過程で少しずつ信頼して頂く――これを積み重ねているだけです。
こうして地道に仕事をしていると、人脈を広げるためのアクションは取るつもりもなかったし、そんな時間があったら、作る時間に回したいと思う。不器用だとわかってるけど、そもそも、人生の中で、好きなものを少しでも多く残したいですから。
僕は企画など仕事全般と<人>に対しては能動的だと思いますが、<人脈づくり>に対しては受け身であり、自然に任せています。前述の彼は夜になるとパーティに出て、「誰と仲良くなった」ということをベースに仕事をしようとしている。その当時、これは、なんか違うな、と感じていました。