中国最大の売春街、広東省東莞市(とうかんし)。2月10日、公安当局の性風俗店掃討命令を受け、サウナやカラオケなど約2000か所に捜査が入った。駆り出された当局員は6500人。その後の省内全域を対象とする摘発と合わせ、1000人余の風俗関係者が連行された。
記者はかつて、この売春街を潜入取材したことがある。街中のホテルにはサウナがあり、店内に入ると小部屋に通される。淫靡なドレスをまとう“小姐(シャオジェ)”が次々と姿を見せ、客の目の前で選抜ショーが行なわれた。女性の胸には番号が書いてある。数字が8ならば“800元(約1万4000円)でお持ち帰り可能”といった料金体系を意味する。
公安の手入れは大丈夫なのか。マネージャーに質したところ、「心配いらない。手入れがあるときは事前に(公安関係者が)教えてくれるから、その日は休業する」とニンマリと返された。
性風俗店が公安当局と裏で癒着していたのは“公然の秘密”である。「地元官僚に多額の袖の下を握らせ、認可を得ていた。官僚たちにとっての不正蓄財の温床となっていた」というのは中国事情に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏である。
「それだけに今回の取り締まりは、地方の共産党員にも“不正蓄財は許さない”という政治的メッセージが込められている。賄賂や横領などが横行し、緩みきった党内の再生を至上命題とする習近平国家主席の“反腐敗闘争”の一環でしょう」
所変わって北京。全人代を前に、こちらも例年よりひときわ強い緊張に包まれている。中国最高幹部逮捕のXデーが近い、と囁かれているからだ。ターゲットは、中国の最高意思決定機関、中国共産党中央政治局務委員(常務委)だった周永康(しゅう・えいこう)氏(71)である。
中国共産党員は全人口の6%にあたる8500万人、その頂点にあたる常務委メンバー9人は「チャイナ9」と呼ばれ(2012年11月の改選によって常務委は2人減り現在は「チャイナ7」)、国内外から動向が注目されてきた。