小保方晴子さんの「STAP細胞」発見で注目を集めている、日本で唯一の自然科学の総合研究所「理化学研究所」。契約任期のある研究者の平均年齢は39歳と大学に比べはるかに若く、リーダーへの抜擢も多い。リーダーとなれば、研究テーマはもちろん、予算や人事にまで裁量権を持つ。学閥や国籍の垣根もなく、女性にも広く門戸が開かれている。
とはいえ、多くの研究者は1年ごとの契約更新が義務付けられているため、研究成果を残さなければその場を去らねばならない。だが、この重圧が研究への大きなバネとなっているのも事実だ。
大学の研究室では、なかなかこうはいかない。若手の助教が研究グループを指揮することなどないうえ、たとえ教授になっても授業に時間を取られて研究に専念することは難しい。
若い研究者が思う存分研究に専念できる「科学者の楽園」。この伝統は今に始まったことではない。97年の歴史をひもとけば、その礎を築いたのは第3代所長の大河内正敏だった。東京帝大教授で貴族院議員でもあった大河内は、理研で生まれた発明を商品化することで自前の研究費をねん出した。
タラ肝油からつくったビタミンAは当時国民の栄養失調を補う特効薬「理研ヴィタミン」として大ヒットし、電気工学の研究から生まれたアルマイト加工技術も多額の収入を理研にもたらした。設立された会社は63社にのぼり、15大財閥の一つ、「理研コンツェルン」として国家プロジェクトに関わっていった。