スポーツ

朝日新聞が浅田真央を特集した話題のWEB記事 担当記者が解説

 ソチ五輪で朝日新聞がウェブ用に作成した浅田真央選手の特集企画「ラストダンス」が大きな話題になっている。公開後三日間でPVは100万を達成、FBのシェアは7万件を越えた。制作に当たった朝日新聞デジタル編集部の古田大輔記者にその裏側を聞いた。(取材・文=フリーライター神田憲行)

 * * *
 「ラストダンス」は浅田選手が演技を始めるスタートポジションの線描画から始まり、彼女の写真とともにソチ五輪、過去の物語、彼女の言葉という三部構成になっている。マウスホイールでダウンスクロールしていくだけで写真と文章、グラフなどが次々と現れる効果が非常に印象的だ。

古田:それは「パララックス」というウエブ技術です。1枚のスクリーンの上に何枚もレイヤーを重ねることで奥行きを出す視差効果(パララックス)で、ホイールを回すだけで複雑な情報が次々と現れていきます。これは昨年ニューヨークタイムズがピューリッツァー賞を受賞した、雪崩被害をリポートしたウェブ記事「Snow Fall」で使われた技術なんですよ。

「Snow Fall」は世界中のメディアで「スノーフォーラーズ」と呼ばれるくらい似たコンテンツが登場するくらい話題になりました。そこで我々もソチ五輪に向けて作ってみようと、昨年11月ごろに当編集部の入尾野篤彦記者が提案しました。テーマは浅田真央さん、タイトルは「ラストダンス」、三部構成ということもすでにそのときにありました。

--いろんな人選が考えられたと思うのですが、そのなかでなぜ浅田さんを選んだのですか。

古田:彼女は12歳で初めてトリプルアクセルに成功しているんですが、年齢制限でトリノ五輪に行けなかった。バンクーバーでは銀を獲ったんですが、「悔しい」と泣く。そしてこのソチ五輪を「自分の集大成」と語っています。日本人はみんな彼女がこの10年間積み上げてきたストーリーを知っているわけで、誰もが彼女の物語を読みたいだろうと思いました。

 実は朝日新聞も今回の「ラストダンス」の前に「Snow Fall」のようにパララックス技術を使ったコンテンツを6つ作っているんですが、話題になっていない。それは作った側の自負はあっても、受け手のニーズ、タイミングにマッチしていなかったんじゃないかと思うんです。競技が終わって、その日のうちにコンテンツを公開するという「速報性」にもこだわりました

--制作にはデジタル編集部だけでなく、記事を書くスポーツ部、写真部、デザイン部といった社内の組織が横断的に協力したそうですね。

古田:サイトの構築が始まったのが2月の第1週で、みんなデイリーの仕事をこなしながら突貫工事です。私も第3章で紹介する浅田選手の言葉を探すために、過去の朝日新聞の記事をだいたい1500本くらい読んで、過去の写真の中から粗選びをしていきました。今回、紙の歴史があるメディアの強みを感じたのは、彼女のカギカッコの中味、つまりコメントを取れるということです。

 朝日新聞が彼女を最初に取り上げたのが12歳のときなんですが、どんな短い記事の中にも「嬉しい」とか「調子が悪い」とか、そのときの生の彼女の言葉がある。写真も著作権がクリアになったものが掲載された分だけでも数千枚ある。自社の中でそうしたコンテンツの中味が使えるのは、ここ数年登場したキュレーションメディアではできないことだと思います。

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン