米国の反発を目の当たりにするや、「河野談話の見直しは国内問題。米国を怒らせるつもりはない」という保険をかけ始めたという指摘である。
その姿を見て大喜びしているのが韓国であり、中国だ。安倍首相が「俺の公約だ」といって断行した靖国参拝は、結果として「戦後最悪の日米同盟」といえる状況を生み出し、冷え込んでいた米中・米韓の関係を近づける触媒となった。「河野談話見直し」でも、それと同じ状況が生まれつつある。安倍首相がいきり立つほど、皮肉なことに首相が頼みとする「日米同盟」の綻びが大きくなり、中国や韓国が米国と接近する。
靖国参拝と河野談話見直しは、安倍首相の自己満足を満たしても、それが日本の国益に結びついているとは思えない。
繰り返すが、現在の歪んだ日韓関係をもたらした河野談話の見直しは、きちんとなされるべきだ。だが、それは安倍首相が「撤回する」と宣言したところで、それを周囲の誰も理解しなければ、まさしく「夜郎自大」にしかならない。そこに安倍首相の自己満足外交の最大の不安がある。
※週刊ポスト2014年3月21日号