「あれはずるい!」──ヤンキースの同僚の左腕エース・サバシアをしてそういわしめた、田中将大の伝家の宝刀SFF(スプリット・フィンガード・ファストボール)。
田中は初登板した1日のオープン戦から、SFFを含む6種類の変化球を惜しげもなく披露した。翌日、アメリカの主要スポーツサイトは、軒並みトップ扱いで称賛したが、はたして田中の変化球の何がずるい、いやスゴイのか。スポーツジャーナリストの福島良一氏が解説する。
「メジャーでは、エース級でも速球に変化球1~2種類を投げる程度。6種類も投げられ、すべてが平均以上の投手はいない。その上、SFFやスライダーなどの決め球が複数ある」
今季ブレーブスからFA移籍してきたメジャー屈指の捕手・マッキャンも、キャンプで田中のSFFを初めて受けた際、「まるでテーブルから落ちてくるようだ」と表現し、速球と同じように入ってきて急激に落ちる球を高く評価をした。
ロイヤルズで日本人初の投手コーチを務めた高橋直樹氏は、別の視点から田中の変化球を評価する。
「メジャーではいまコントロールが求められる。その点、田中の変化球のコントロールはメジャーでも群を抜いている」
田中の6種類の変化球は、カーブ、チェンジアップ、スライダー、SFF、カットボール、ツーシーム。それぞれどうスゴイのか、個別に解説してみよう。
●カーブ
WBCで前田健太から学んだという100km台の大きく曲がるスローカーブ。メジャーではスローカーブを投げる投手は少なく、ストレートと40km以上の緩急があるスローカーブの効果はダルビッシュが実証済み。
●チェンジアップ
田中は中指を立てるようにして投げるのが特徴。日本では同じく落ちるSFFを決め球にしていたのであまり投げなかった。チームメイト・黒田博樹のアドバイスでメジャーでも決め球として効果的と知り、投げ始めた。