円高不況を脱したトヨタは2014年3月期の連結純利益予想を過去最高の1兆9000億円と発表した。販売台数でも世界首位を邁進中である。そのトヨタには遠く及ばないが今期、同じく過去最高益(1050億円)を見込むのがスズキだ。しかも同社は、東日本大震災や円高に業績を左右されることなく、ここ10年、安定的に好業績を続けている。
鈴木修会長と豊田章男社長。どちらも創業家出身のトップだが、キャラクターは対照的だ。
豊田章男社長は豊田家の“御曹司”で慶応大学法学部卒業後、米国留学してMBAを取得し、米国の投資銀行に勤務した後、トヨタに入社。いずれトップに立つべく、販売や経理などを渡り歩き、2009年に満を持して社長に就任した。
「創業家出身ながら、まったく驕らない。上司に直言する社員を好むので、6人いる副社長は皆、社長より年上で忌憚なき意見を述べています。創業家社長という“絶対的象徴”のもと、社員は結束しています」(大手紙記者)
いい車を作ろう──。豊田章男社長はそうしたスローガンを発し続けてきた。
「数値目標を求められる昨今の社長なら、こんな漠然とした目標は口にできない。豊田社長が世間知らずの“坊ちゃん”といわれる所以です。しかしそれが、長らく販売台数世界一を求められ、無個性とも揶揄される大衆車の量産を続けていた技術者のエンジニア魂を蘇らせた」
“脱無個性”を標榜する車造りは、若者ユーザーの遊び心を刺激したピンククラウンや86(ハチロク)といったスポーツカーの発表など、結実し始めている。
“坊ちゃん力”の豊田社長とは対照的に、鈴木会長の現実主義、ワンマンぶりはつとに有名だ。