【著者に訊け】原田曜平氏/『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』/幻冬舎新書/819円
「まったく、近頃のヤンキーは!」と、単に嘆くだけなら誰でもできる。実は意外にもモノを買う彼ら〈マイルドヤンキー〉の消費性向を精査し、具体的な商品開発に結び付けるのが、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー・原田曜平氏の仕事なのだ。
名付けて『ヤンキー経済』。車、酒、タバコ、パチンコやブランド品にいたるまで、「若者の○○離れ」と喧伝される○○を彼らは今でも好み、徹底した〈地元志向〉も大きな特徴だという。
副題に「消費の主役・新保守層の正体」とあるが、本書に報告されるヤンキーの生態は驚くほど堅実だ。かつて尾崎豊が『15の夜』(1983年)に歌った若者と違って、彼らは〈盗んだバイクで走り出さない若者たち〉(前著『さとり世代』副題)であり、矢沢永吉著『成りあがり』(1978年)にあるような上昇志向や社会的反抗心もほとんど感じさせない。が、彼らヤンキー層こそ日本の未来に風穴を開ける〈優良な消費者〉なのだ。
自身は1977年東京生まれの36歳。父の転勤で小6から2年間は海外で過ごすが、地元は文京区駒込だ。
「当時は高校を辞めて暴走族に入った小学校の同級生〈K君〉のようなヤンキーもいて、北区なんかも相当荒れていた。そのK君が〈最近の若者はよくわからん〉と言うくらい最近はヤンキーの質自体が変わり、僕が彼らの部屋でエロDVDを見つけちゃってもフルボッコにされないくらい友好的で優しいんです(笑い)。
つまり今回紹介したマイルドヤンキーや、1980年代のツッパリ風な空気感を残す〈残存ヤンキー〉たちも、あくまでさとり世代の一部であって、若者全体がマイルド化しているんですね」