「経済一流、政治は三流」といわれた時代、一流財界人は政治に対して強い発言力を持っていた。しかし、経済の低迷とともに財界を束ねる経団連に往時の勢いも気概もなく、いまや「政治は三流、経済四流」というべき状況である。そんな経団連にとって代わろうというのが起業家中心の経済団体「新経済連盟(新経連)」だ。どちらが日本の経済を一流に戻すのか、その戦いが始まっている。
財界分裂のきっかけは東日本大震災だった。楽天の三木谷浩史・会長は電力自由化や原発政策をめぐる財界主流派の考え方に反発して経団連を脱退(2011年6月)すると、「経団連は日本企業の護送船団方式を擁護し、これが世の中の共通認識だとカムフラージュするために作られた団体なんです」と批判。翌年にIT企業を中心に“第2経団連”ともいうべき新経連を旗揚げした。
「いまや日本のGDPに占める製造業の寄与度は2割しかないのに、経団連幹部は製造業の経営者ばかりで国に旧態依然とした輸出奨励の経済政策を提言している。だから違う声を上げる新たな財界団体が必要だった」(新経連加盟企業の経営者)
当然、政策面でも新経連と経団連は対立する。新経連は「電力自由化すればビジネスチャンスが広がり、自由競争で電力料金は下がる」という考え方だが、電力会社との結びつきが強い経団連は「国破れてソーラーあり、になりかねない」(米倉弘昌・経団連会長)と慎重な立場をとっている。
それでも両団体の加盟企業の規模には大きな開きがあり、米倉会長は当初、新経連を「あれは新興のニューエコノミーの業界団体にすぎない」と歯牙にもかけていなかった。ところが、第2次安倍政権の発足で一気に力関係が逆転した。
安倍首相は就任すると米倉会長より先に三木谷氏と会談し、アベノミクスの推進機関である産業競争力会議や規制改革会議の議員に三木谷氏や金丸恭文・フューチャーアーキテクト会長ら新経連メンバーを次々と起用した。それに対して、米倉氏は経団連会長の“指定席”とされていた経済財政諮問会議のメンバーにも選ばれなかったのである。