コンビニ業界2位の座を固めるローソンで社長交代が予定されている。
これまでローソンの「顔」といえば、若さと強力なリーダーシップを武器に12年間トップに君臨した新浪剛史氏(55歳)が広く知られているが、新浪氏に代わって社長兼最高経営責任者(CEO)に就くのは、玉塚元一氏(51歳/現COO=最高執行責任者)である。
今回の人事は「昨年より規定路線だった」と話すのは、経済ジャーナリストの松崎隆司氏。
「ローソンは昨年5月に社長・副社長ポストを廃止してCEO・COOの2頭体制にしました。これにより、新浪氏は玉塚氏に多くの権限を委譲し、次期社長に据えるための“助走期間”を設けたわけです」
新浪氏はここ最近、本業に加えて政府の産業競争力会議のメンバーになったり、経済同友会の東京オリンピック・パラリンピック招致推進プロジェクトチームの委員長に就任したりと“社外活動”に追われていた。
また、事あるごとに政界への転身も噂され、「今回の東京都知事選でも新浪氏を推す声があった」(政界関係者)ほど。そろそろ経営の第一線から退いて、財界とは別の世界で名声を高めたい欲が強まったのかもしれない。
そんな新浪氏に比べて影が薄かった玉塚氏だが、「元ユニクロ社長」の肩書きを聞けばピンとくる人も多いだろう。旭硝子、日本IBMを経て1998年にユニクロを展開するファーストリテイリングに転職。カリスマ創業者・柳井正氏の覚えもめでたく、わずか4年で社長に上り詰めるも、翌年には業績未達を理由に“電撃解任”の苦渋を舐めさせられた。
その後、企業再生を手掛けるリヴァンプにてロッテリアの再建などに携わっていた玉塚氏を再び現場経営に呼び戻したのが新浪氏だった。経済誌『月刊BOSS』編集委員の河野圭祐氏がいう。
「新浪氏と玉塚氏は年齢こそ違いますが、同じ慶応大学出身で新浪氏はバスケや器械体操、玉塚氏はラグビーとお互いに体育会出身。さらに、2人とも米国でMBA(経営学修士)を取得するなど共通点が多く、古くから親交もあったといいます」
玉塚氏がローソンに招聘された2010年以降も新浪氏との気心の知れた関係は続いた。「2人とも体格がいいので、社内ではお互いに親しみを込めてゴリラ1、ゴリラ2と呼び合うこともある」(ローソン関係者)との証言が飛び出すように、二人三脚で競争の激しいコンビニ業界を生き抜いてきたことがうかがえる。