手術・治療の技術だけでなく、看護・リハビリの面まで、今、日本の「獣医療の高度化」が劇的に進んでいる。3月19日に発売された『犬の名医さん100人データブック』(小学館刊)によると、それをもたらしたのは飼い主たちのニーズだという。
犬が「ペット」から「伴侶動物」、「家族」と呼ばれる存在になり、飼い主はこれまで以上に犬の健康に気を配るようになった。また、「室内飼い」など住環境が向上したことで犬が長生きすると、「がん」や「心臓病」など重い病気やケガが、以前より気になってきた。こうした飼い主ニーズを感じ取って、日本の獣医療の高度化が進んでいるのだ。この「進化する獣医療」を賢く利用するためには、知っておいた方がいいことは2つ。
ひとつは、「専門医」や「認定医」といった資格を持つ獣医師が現れ始めたこと。特に「専門医」はその分野で世界的に高いレベルにある獣医師に与えられる資格で、すでに欧米では学会ごとに専門医制度を実施している。
これまでは一部の日本の獣医師が、専門医資格を現地で取得し、日本で診療してきた。麻布大学附属動物病院の藤井洋子小動物診療部長や埼玉県所沢市の日本小動物がんセンターの小林哲也センター長がそうで、米国獣医内科学会の心臓病と腫瘍の専門医資格を取得している。また、大阪府松原市の松原動物病院本院の辻田裕規眼科主任も米国獣医眼科専門医を取得して帰国してきた。
こうした世界の動きを追うように、近年になって日本でも学会ごとに専門医制度がスタートし、「外科」「皮膚科」「眼科」などで専門医が出始めた。外科の専門医である「日本小動物外科専門医」は、国内にはまだ2人しか取得者がいないほど厳しい条件と試験が課されている。
また専門医制度とは別に、日本独自の認定医制度もスタート。専門医や認定医といった肩書きは、今後、優秀な獣医さんを選ぶ際の基準のひとつになっていくと思われる。
もうひとつの変化は、診療科の多様化。かつては「内科」「外科」くらいにしか分かれていないイメージだったが、最近は「外科」だけでも「脳神経外科」「心臓外科」「軟部組織外科」「腫瘍外科」「整形外科」と細分化している。また、外科以外でも、「循環器科」「腫瘍科」「放射線科」「呼吸器科」「内分泌科」「皮膚科」「眼科」「歯科」「行動科」など、診療科がどんどん多様化、細分化。こうした動きは大学病院に始まり、個人病院でも専門的な診療科を掲げるところも出てきている。