国内

被災地の高齢者は血圧高く、脳卒中発症率は右肩上がりの傾向

 震災でどのような健康被害があったのか。実態を冷静に把握する必要がある。

「心の傷」は改善しつつある。東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の辻一郎教授は2011年6月から宮城県石巻市2地区の住民のべ3713人に健診やアンケートによる健康調査を継続している。

 その結果、震災3か月後に睡眠障害が疑われた被災者の割合は4割以上にのぼったが、昨年11月時点で全国平均に近い約3割まで回復。抑うつ、不安状態など「こころの健康」に問題がない被災者の割合もほぼ全国平均まで回復した。

 その一方、高齢者の身体状態が悪化しつつある。辻教授の調査で、「遠くへも1人で歩いている」と回答した65歳以上の高齢者は11年夏に71.9%だったが、昨年11月には47.5%まで減少。辻教授はこう言う。

「震災後、仕事や生きがいを失った高齢者は孤立し、自宅や仮設住宅に閉じこもりがちです。そのため生活が不活発になり、高血圧や糖尿病など生活習慣病のリスクが高まっています」

 高血圧と脳疾患の増加を示すデータがある。岩手医科大学神経内科・老年科の寺山靖夫教授は、被害が甚大だった岩手県三陸沿岸地域(陸前高田市、山田町、大槌町)の仮設住宅に住む高齢者のうち、脳血管障害の既往歴のない1090人(平均72.1歳)の平均血圧を調査。

 その結果、震災1年後(2012年2月)に142.6/81.6mmHg(収縮期血圧/拡張期血圧)だった被災高齢者の血圧は、震災2年後(2013年2月)に154.7/93.2mmHgまで上昇。

 同地域の病院、診療所における脳卒中の発症患者は、2011年4月~2012年3月の11人に対し、2012年3月~2013年1月は52人。母数にばらつきがあるため全国平均と比較できないが、震災1年目に比べ発症数は月平均で5倍以上になった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン