ビジネス

「有事の金」でも短期売買は不向き 下落要因を専門家が解説

 混迷の度合いを深めるウクライナ情勢。米ロの冷戦懸念が再び高まる中、世界中の投資家が注目しているのが、俗にいう“有事の金”である。経済危機や国際情勢が不安定になると金(GOLD)価格が上昇する傾向にあるためだ。

 実際、金相場の国際指標となるニューヨーク市場の金先物価格は今年に入ってから11%上昇。現在、1トロイオンス(約31.1g)あたり1330ドル前後で売買されている。

 だが、「人の心を妖しく動かす“有事の金”という言葉に惑わされてはいけない」と警鐘を鳴らすのは、金市場に詳しい経済アナリストの豊島逸夫氏である。

「確かにウクライナ情勢は短期的には金価格に影響を与えていますが、このまま上がり続けることはないでしょう。もし軍事衝突にでもなったらプロのディーラーたちは一斉に売り抜けるので、価格は逆に下がっていきます。

 つまり、本当の有事になったら金は“買い”ではなく、すでに“売り”のタイミングなんです。過去の歴史をみても、有事の金に煽られていつも高い金を掴まされてきたのは個人投資家なのです」(豊島氏)

 さらに、金相場にとってじわじわとブレーキとなりそうな下げ材料も出てきた。アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のイエレン議長が、ゼロ金利政策の解除に踏み切る方針を匂わせたのだ。

「金の最大のデメリットは金利を生まないこと。国債や債権、銀行預金など黙っていても金利がもらえるのであれば、わざわざ金に相場を張る必要はなくなりますからね。確実に利息がつく資産にマネーが流れるのは目に見えています」(前出・豊島氏)

 もちろん、ドル建ての金価格が下がれば、円建てで金を買う日本の投資家にとっても不安材料が増えることになる。では、いま金は買わないほうがいいのかといえば、必ずしもそう言い切れないのが金投資の難しさである。

「これから円安がさらに進んでくれば円の価値はどんどん目減りしていきます。また、円の力が弱くなっているうえに物価は徐々に上昇しているので、金投資はインフレによる貨幣価値の下落から財産を守る“インフレヘッジ”には最適です」(豊島氏)

 国内では有事の金に加え、消費増税も間近に迫っているため、金の駆け込み需要が旺盛だという。金本体の小売り価格が増税で値上がりする前に買っておいたほうがトクだとする論である。

 しかし、豊島氏は短期的な投機目的で金を買うべきではないと釘をさす。

「そもそも金の購入には手数料がかかりますし、3%の増税分ぐらいの価格はすぐに帳消しになってしまうこともざらにあります。金はあくまで“守りの資産”として全財産の10%以内をメドにコツコツと長期で買うのが鉄則。大金をつぎ込んで年末までにひと儲けしようなんて、プロでも難しい話です」

関連記事

トピックス

希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
NASAが発表したアルテミス計画の宇宙服のデザイン(写真=AP/AFLO)
《日本人が月に降り立つ日は間近》月面探査最前線、JAXA「SLIM」とNASA「アルテミス計画」で日本の存在感が増大 インドとの共同計画や一般企業の取り組みも
週刊ポスト
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト