日本を代表する経営者として双璧をなすのがソフトバンクCEOの孫正義氏(56)と衣料チェーン「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングCEOの柳井正氏(65)だ。
今年3月、米経済誌フォーブスが発表した世界長者番付によると、孫氏の資産は184億ドル(約1兆8700億円)で日本人1位。柳井氏は日本2位で179億ドル(約1兆8200億円)。
世界が認める2人の経営者、孫氏と柳井氏の「人付き合い」に対する考え方は対照的。孫氏を語る上で避けては通れないエピソードが、16歳のとき、日本マクドナルド社長だった藤田田氏に会いに行った話だ。
孫氏は藤田氏の著書を読んで感激し、何のツテもないのに何度も「会わせてくれ」と秘書に電話し、「3分でいいから」と頼みこんだ。神戸大学経済経営研究所リサーチフェローの長田貴仁氏が話す。
「藤田さんはその後、『孫さんの態度、言葉遣いは実に丁寧で礼儀正しかった』と褒め続けた。日本で会社を立ち上げてからも大企業の経営者たちに可愛がられ、『オジンころがし』とまで言われた」
一方の柳井氏については、長田氏はこう言う。
「ひたすら人と会って人脈を広げることに腐心するベンチャー経営者が多い中で、柳井さんは、何の考えもなく人と会っても収穫はない、それよりもじっくり勉強すべき、と考える人です」
2002年から2年間、柳井氏の下で執行役員を務めた名取勝也氏(現・オリンパス社外監査役)も話す。
「ユニクロは東レや三菱商事と組んで中国展開を進めたのですが、そのときも『力を貸してくれ』ではなく、『自分のプランは絶対にいいはずだから一緒にやろう』という持ちかけ方。相手に頼るのが大嫌いで、すべて自力で切り開こうとするんです」