日本を代表する経営者として双璧をなすのがソフトバンクCEOの孫正義氏(56)と衣料チェーン「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングCEOの柳井正氏(65)。米経済誌・『フォーブス』が発表した世界長者番付によると、孫氏の資産は約1兆8700億円で日本1位、柳井氏は日本2位で約1兆8200億円。
世界も認める2人の経営者の性格や理念、人付き合いに対する考え方は対照的だが、経営者としての思いは共通する。その一つが海外進出に懸ける執念だ。
孫氏は2008年第2四半期の決算発表会で「もう新たな借金はしない」と宣言した。ところが、スプリント買収に際してそれを撤回し、新たに1兆3000億円近くの借り入れを行なった。
「国内の携帯電話市場は頭打ちであり、世界でのシェアを拡大するためには、巨額の借り入れをしてでもアメリカに進出する必要があった」(神戸大学経済経営研究所リサーチフェローの長田貴仁氏)という。
柳井氏にしても2013年8月期の連結で、日本の衣料品メーカーとして初めて売上高が1兆円を超えたが、国内は3期連続の営業減益。「国内市場が飽和状態である以上、海外に活路を見出すしかない」(長田氏)のだ。
「世界一」を掲げる両者には“焦り”もある。『月刊BOSS』編集長の関慎夫氏は次のように解説する。
「IT業界の変化スピードは非常に速いので、今、アメリカに進出しておかないと世界一の企業になる夢を実現することは不可能になってしまう。アパレル業界でもH&MやGAPやZARAがグローバル展開を進めている。国内市場を固めてから世界に進出しようと思っても、世界は悠長に待ってくれない」
もう一つ、2人が共有している危機感が、後継者問題だ。2010年7月、ソフトバンクは、「孫正義の後継者発掘・育成・見極め」を目的として「ソフトバンクアカデミア」という企業内学校を開校し、毎年、社内外から研修生を募集している。
「しかし、そういう教育だけでは“優秀な部下”は育成できても、“優秀な後継者”は育成できない」(一橋大学特任教授・西山昭彦氏)